エボラウイルスの種類

エボラウイルスは、モノネガウイルス目 (Mononegavirales)のフィロウイルス科 (Filoviridae)の中のエボラウイルス属 (Ebolavirus)で、5種類があります。

 

ウイルスは、持っている核酸によって大きく2つに分けることができます。RNAウイルスとDNAウイルスで、エボラウイルスはRNAウイルスになります。
エボラウイルスはRNAウイルスの中でも、フィロウイルスと呼ばれるもので、らせん対称で一本鎖RNAがあり、外側をエンベロープと呼ばれる脂質二重膜で包まれています。

 

ブンディブギョエボラウイルス(BDBV)(Bundibugyo ebolavirus)

 

スーダンエボラウイルス(SUDV)(Sudan ebolavirus)
   ヒトの致死率50%
ザイールエボラウイルス(EBOV)(Zaire ebolavirus)
   ヒトの致死率90%
レストンエボラウイルス(RESTV)(Reston ebolavirus)
   フィリピンと中国で発見。
   ヒトに感染するも、発症者や死亡者の報告なし。
タイフォレストエボラウイルス(TAFV)(Taï Forest ebolavirus)

感染症の分類・類型

 

類型 感染症名 特長 対応・措置(強制できるもの)
届出 入院 就業制限 対物措置
基準 期間 届出先

1類感染症

 (7疾患)

・エボラ出血熱

・クリミア・コンゴ出血熱
・痘そう(天然痘)
・南米出血熱
・ベスト
・マールブルグ病
・ラツサ熱

・感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症 全数把握(医師が届出) 診断後直ちに 最寄りの保健所長を経由して都道府県知事へ

2類感染症

 (5疾患)

・急性灰白髄炎(ポリオ)
・結核
・ジフテリア
・重症急性呼吸器症候群
   (SARS)
・鳥インフルエンザ
   (H5N1またはH7N9)

・感染力、罹患した場合の重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症

3類感染症

 (5疾患)

・コレラ
・細菌性赤痢
・腸管出血性大腸菌感染症
・腸チフス
・パラチフス

・特定の職業への就業によって集団発生を起こしうる感染症 ×

4類感染症

(43疾患)

・E型肝炎
・A型肝炎
・黄熱
・Q熱
・狂犬病
・炭疽
・鳥インフルエンザ
・ボツリヌス症
  (H5N1・H7N9を除く)
・マラリア
・野兎病
・その他の感染症
  (政令で指定)

・動物、飲食物などの物件を介して天に感染し国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症(人から人への伝染はない) × ×
5類感染症

全数把握

(18疾患)

・ウイルス性肝炎
  (E型・A型を除く)
・クリプトスポリジウム症
・後天性免疫不全症候群
  (AIDS)
・梅毒
・麻しん
・その他の感染症
  (省令で指定)

・国が感染症発生動向調査を行い、その結果などに基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症 診断後7日以内 × × ×

定点把握

(26疾患)

・インフルエンザ
  (鳥インフルエンザ,
  新型インフルエンザ
  等感染症を除く)
・性器クラミジア感染症
・メチシリン耐性
  黄色ブドウ球菌感染症
・その他の感染症
  (省令で指定)

 

定点把握
(指定届出機関の管理者が届出)

次の月曜日まで/
翌月初日まで

× × ×

エボラ出血熱の検査・検出

血液、咽頭拭い液、尿を検体として
 ①分離・同定による検出
 ②酵素免疫測定(ELISA)法による抗原検出
 ③逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による遺伝子の検出
血清を用いて
 ○蛍光抗体法又はELISA法によるIgM抗体・IgG抗体検出

 

逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で陽性なら、エボラ出血熱と確定診断がつきます。
しかし、エボラ出血熱は、発症(通常は発熱)から72時間以内は、血液中のウイルス量が少なく、感染していても陰性と出るいわゆる「偽陰性」になることが多いという報告があります。

 

逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による検出に時間がかかるのは、RNAウイルスであるエボラウイルスの遺伝子を増やすのに時間が必要だからです。

 

シエラレオネにある「国境なき医師団」のエボラ患者管理センターからの報告では、発症直後のPCRが陰性だった14例のうち、9例が2回目の検査で陽性になったといいます。

 

一方、米国では、FDAが高信頼度で1時間以内にエボラウイルスを検出できるBioFire社が作った「FilmArray」という検査装置を許可しています。

エボラ出血熱の症状と潜伏期間

潜伏期間は2~21日で、平均約1週間で、発症は突発的に起こります。

 

2~3日で急速に悪化し、死亡例では約1週間程度で死に至ることが多くなっています。

 

症状は、ほぼ必発といわれる発熱に加え、疼痛(頭痛、筋肉痛、胸痛、腹痛など)、無力症が多くなっています。
局所の血管からの出血により、臓器出血や点状出血が見られ、目などの粘膜出血を起こしたりすることもあります。
ショックやDICにより死亡することが多くなっています。

 

致死率については、20%という報告もある一方、50~90%と幅広くなっています。
感染者の特徴もさることながら、ウイルスの種類も多少影響しているのかもしれません。

エボラウイルス病に対する6つの候補医薬品

1.Biocryst(米国)
   BCX 4430 
     ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)インヒビター

 

2.Fab'entech(フランス)
   高度免疫ウマ血清

 

3.Mapp Biopharmaceutical(米国)
   ZMapp 
    ザイールエボラウイルスの異なるエピトープを認識する3種のヒト化モノクローナル抗体

 

4.Sarepta Therapeutics(米国)
   Sarepta AVI-7537
    アンチセンス核酸(ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマー)

 

5.Tekmira(カナダ)
   TKM-Ebola 
     抗エボラウイルスRNA干渉薬

 

6.富山化学工業
   ファビピラビル 
     RNAポリメラーゼ阻害薬