テレビなどの広告で、肌にやさしい弱酸性というキャッチコピーがあります。
確かに、人間の肌のpHは弱酸性なので、それに近い弱酸性というのは理屈は通っていますが、本当にそうなのでしょうか。
肌にやさしい純せっけん
よく洗浄剤の安全性について考えるとき、界面活性剤などがはいった合成洗剤よりも、純せっけんのほうが皮膚に残りにくく、分解されやすいので、毒性が少なく肌にやさしいといわれます。
『純せっけん』とは、合成の界面活性剤を使用しないで、脂肪酸ナトリウムと脂肪酸カリウムなどの石鹸素地で作られる石鹸のことをいいます。
ちなみに電子機器などのミクロの配線板の汚れを洗浄する場合は、通常純せっけんが使われます。
もし合成洗剤で洗うと、不都合な膜ができて水で洗っても落とせなくなってしまうのです。
純せっけんは、泡立ちもよく肌にやさしいのですが、洗浄力が強く、使用するときは必要最小限にとどめたほうが良いのです。
弱酸性にするなら純せっけんではなく合成洗剤が有利

肌のpHに近い弱酸性で洗浄剤の商品を作ろうとした場合、もともと肌にやさしい純せっけんは不利になってしまいます。
なぜならば、泡立ちもよく肌にやさしく、洗浄力にもすぐれた純せっけんは、弱酸性ではなく弱アルカリ性だからです。
しかも純せっけんを無理に弱酸性にしようとすると、せっけんカスが出てきてしまい商品化できません。
そこで弱酸性のものを作ろうとすれば、合成洗剤、つまり界面活性剤を利用することになります。
最近の界面活性剤の洗剤も、油脂やグリセリンを混ぜたりすることで、使用感や保湿感を演出することもできます。
健康な人の肌は弱酸性だから、弱酸性は肌にやさしいというイメージですが、もともと健康な人の肌が弱酸性になっているのは、常在菌のおかげなのです。
肌が弱酸性を保っていることで、カビや酵母類、雑菌などから守られています。
アルカリ性の石鹸はこれをアルカリ側に一時的とはいえ傾けてしまいますので、そこで弱酸性のやさしい洗浄剤の開発が進んでいきました。
弱酸性でも肌バリアを壊す
しかし前述したとおり、弱酸性にしようとすると純せっけんでは無理で、界面活性剤を使うことになります。
界面活性剤は肌バリアをこわし、肌を乾燥しやすくしてしまいます。
その上、肌を守ってくれている常在菌まで殺してしまいます。
肌へのやさしさという点からすれば、純せっけんがよく、一時的にアルカリ側に傾いたとしても、数分後には肌は弱酸性にもどります。
もちろん刺激性のテストなどもされていますし、安全性には十分配慮されているので、純せっけんを使うか、弱酸性のソープを使うかというのは好みの問題だと思います。
弱酸性のものは、確かにpHという点では、弱酸性は肌にやさしいというのは事実なのですが、界面活性剤が含まれているという点を考慮すると、肌にやさしい弱酸性という言葉は、少しひっかかるところです。