『ベラドンナ』と聞くと、少し薬草に知識がある人だと、アルカロイド、毒、ナス科といった言葉を連想すると思います。
〇〇〇ドンナというと、なんか美女っぽい響きがあると思われる人もいますが、実際に本当に美女と関係があるのです。
生薬としてのベラドンナ
『ベラドンナ』は、学名 Atropa belladonna で、これを古典ラテン語読みするとアトロパ・ベッラドンナ、英語読みするとアトロパ・ベラドナになります、
ベラドンナは、シソ目ナス科オオカミナスビ属に属する多年草で、別名を狼茄子(オオカミナスビ)と言います。
ヨーロッパに時制していて、山間の日陰など湿気が多くて石灰質の肥えた土壌を好み、全草に毒を含んでいます。
特に根茎と根に毒性が強く、ベラドンナ根には、アルカロイドであるヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミンなどを含んでいます。
このベラドンナアルカロイドの副交感神経発症に麻痺的に作用する力を利用して、鎮痙薬として用いられています。
知られざる美女の神話
神話といえば古代ギリシャですが、オオカミナスビ属(Atropa)は、ギリシャ語ではアートロポスというギリシャ神話に登場する三女神の一人にちなんだ名前になっています。
ギリシャ神話の運命の三女神モイライは、長女のClotho(クロト)が運命の糸を紡ぎ、次女のLachesis(ラケシス)がその糸を手繰り寄せてその長さを決め、三女 Atropos(アートロポス)がその糸を断ち切ることで寿命が決まると言われていて、これはベラドンナが生命を断ち切るほど有毒であることから命名されたと言われています。
一方、話しをイタリアに向けると、ベラドンナのBelladonna は、イタリア語で「美しい」という意味の bella(ベッラ)に、イタリアの貴婦人・美しい淑女に対する敬称である donna(ドンナ)が合体してできていて、英語の beauty も、bellaと同じラテン語に由来しています。
ちなみに、聖母マリアを指す「マドンナ」は、イタリア語で私の弱形にあたる ma に、donna がついて、私の淑女というところから Madonna(マドンナ)になっています。
美女とベラドンナの関係
ルネッサンス時代のイタリアでは、ベネチアなどの婦人たちが化粧用にベラドンナの葉の汁を点眼して目を大きく美しく見せるために使っていました。
ベラドンナの葉や根に含まれるアルカロイドの「アトロピン」には、瞳孔を大きくする散瞳作用があるため、目を大きく美しく見せたい女性に使われていました。
アトロピンを目に入れることで、副交感神経が抑えられ交感神経優位に働くことで、瞳孔が大きく開きます。
今日では美容のために瞳を大きく見せたい場合には黒い縁取りがあるコンタクトレンズが使われますが、昔は美容のためにベラドンナを点眼していたとは驚きです。