

老化を遅らせるのに大切なのは「どうやってそのスイッチを押すか」ということになります。
『オートファジー(自食作用:Autophagy)』とは、細胞が自分自身を掃除してリサイクルする仕組みのことです。
この「細胞内の大掃除」が活発になると、不要なタンパク質や老朽化したミトコンドリアなどの老廃物が溜まりにくくなり、老化に抗うことができるようになります。
実は、適度な「空腹時間」を作ることが、この掃除スイッチを入れ、老化に抗う秘訣だと言われています。
そのために推奨されているのが、『16時間断食(間欠的ファスティング)』です。
『16時間断食(間欠的ファスティング)』は、最後に食べてから16時間空けることで、細胞がリサイクルモードに入るため、老化防止に効果があるというものです。
16時間、食べ物が体に入ってこないと、細胞の中では以下のような「生存をかけた緊急若返りモード」が発動します。
前の食事から時間が経つと、血糖や肝臓に蓄えられていたグリコーゲンが使い果たされ、細胞内でエネルギーとして使われるATP(アデノシン三リン酸)の生産が減り、AMP(アデノシン一リン酸)の割合が急増してきます。
するとこの状態を飢餓のピンチと感知し、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)が作動しはじめ、細胞はエネルギー効率を極限まで高めようとして、燃料となるNAD⁺の合成量を一気に増やします。
バッテリーであるNAD⁺が満たされることで、『長寿遺伝子SIRT1(サーチュイン1)』がフル稼働し、細胞は「超省エネ・保護モード」に入ることで寿命が延びます。
さらに、SIRT1やAMPKの強力な命令によって、細胞内でオートファジー(自食作用)が始まります。
これは、細胞内にある古くなって有害物質を出しそうなミトコンドリアや、異常なタンパク質を、自分の細胞内の小器官(リソソームなど)でドロドロに分解し、新しい綺麗な材料へとリサイクルしていきます。
<参考文献>
Effects of Intermittent Fasting on Health, Aging, and Disease(健康、老化、および疾患に対する間欠的断食の影響)
New England Journal of Medicine (NEJM). 381(26), p2541–2551、2019
一方で、食事の時間を16時間空けても空けなくても、体重の減り方や、体脂肪の減少、代謝の改善度合いには全く差がなかったというように、『16時間断食(間欠的ファスティング)』に慎重な意見を述べている論文もあります。
<参考文献>
Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss(体重減少における時間制限食事を伴うまたは伴わないカロリー制限)
New England Journal of Medicine (NEJM). 386(16). 1495–1504、2022
食事の時間を制限する:
例えば、午後8時に夕食を終え、翌日の正午まで食事を摂らない。
これにより、16時間の断食が成立します。
週に数回の実施:
毎日行うのが難しい場合は、週に数回実施するだけでも効果があります。
夕食を早めに済ませることも有効です
腹八分目(カロリー制限:Calorie Restriction):
摂取カロリーを抑えることは、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)を活性化させる最も確実な方法の一つと言われています。
(具体的な方法)
食事量の調整:
食事を終えた後に「もう少し食べられそう」と感じる程度に抑えることが腹八分目の目安であることを認識することが大切です。
満腹感を感じるまで食べないように心掛けましょう。
カロリー計算が得意な人は、カロリーの目安をあげると日本人の成人の平均摂取カロリーは約2000kcalですが、腹八分目を実践する場合は1600kcal程度を目指します。
こうすることで1日あたり約400kcalのカロリー制限が可能です。
慢性炎症(インフレイジング)を抑えるため、ポリフェノール豊富なベリー類、オメガ3脂肪酸を含む青魚、色の濃い野菜を積極的に摂りましょう。
オートファジーを活性化させるために推奨される食材としては、次のようなものがあります。
ポリフェノール豊富なベリー類: ブルーベリーやラズベリーなど。
オメガ3脂肪酸を含む青魚: サーモンやマグロなど。
色の濃い野菜: ほうれん草やブロッコリー、ニンジンなど
熟成ニンニクなどで摂取された『S1PC』が引き起こす若返りリレーの途中には、『SIRT1(サートワン)』という長寿遺伝子(サーチュイン)を活性化するステップがあります。
日常生活の中でこの『SIRT1』を刺激する習慣を取り入れることで、『S1PC』の効果をさらに後押しできます。
『SIRT1(サートワン)』を一言でいうと、「細胞内の環境をパトロールし、遺伝子の働きを調節する脱アセチル化酵素」ですが、テレビや雑誌などでは、わかりやすく説明するために『長寿遺伝子』とか『若返り遺伝子』などと紹介されたりしているのですが、専門的・生物学的には、この遺伝子から作られる「酵素(タンパク質)」のこと自体を指しています。
ヒトのDNAは「ヒストン」という糸巻きのようなタンパク質に巻き付いてコンパクトに収納されている構造になっているということは、高校の生物の授業ででてくると思いますが、このヒストンに「アセチル基」という目印がつくと、糸巻きが緩んで遺伝子のスイッチが「ON」になるのです。
『SIRT1(サートワン)』は、この目印をパッと外す、つまり脱アセチル化することで、遺伝子のスイッチを休止状態のOFFにします。
この遺伝子のスイッチをOFFにすることと、細胞の老化とどう関係があるのかという点ですが、細胞が老化してくると、あちこちの遺伝子のスイッチが暴走して必要以上にONになってしまいます。
必要もないのにあちこちでスイッチがONになるので、細胞が疲れてしまいます。
『SIRT1』は、この余分にONになっている、無駄な遺伝子のスイッチをOFFにすることで、細胞を「省エネ・お休みモード」にし、細胞が長持ちするように守ってくれるのです。
体を動かすことは、細胞内の発電所である「ミトコンドリア」の質を高めることに直結します。
『HIIT(高強度インターバルトレーニング)』として、「20秒全力で動いて10秒休む」といった短時間の負荷運動は、細胞レベルでの若返り効果が高いことが研究で示されています。
(具体的な方法)
基本的なメニュー:
20秒間全力で運動し、10秒間休むというサイクルを繰り返します。
この「20秒全力で動いて10秒休む」という運動プロトコルは、日本発のHIIT(高強度インターバルトレーニング)の代表格である「タバタプロトコル(Tabata Protocol)」として世界的に有名なものになっています。
このサイクルを8回行います。
すると合計4分間でトレーニングを完了することができますので、ちょっとしたスキマ時間でも行うことができます。
例えば、スクワットジャンプやバーピーなど全身を使う運動を取り入れると良いでしょう。
これを毎日、合計4分間なので忙しい方でも取り入れやすい運動になっています。
それでもどうしても忙しいとか、疲れてしまってという人は、まずは週3回を目標にしてみると良いでしょう。
短時間で効果的にミトコンドリアを活性化させることができます。
<参考文献>
Enhanced Protein Translation Underlies Improved Metabolic and Physical Adaptations to Different Exercise Training Modes in Young and Old Humans
(異なる運動モードに対する若年者および高齢者の代謝・身体的適応の改善の根底には、タンパク質翻訳の強化がある)
Cell Metabolism. 25(3), p581–592, 2017
高齢者(65〜80歳)がHIITを12週間行ったところ、筋肉細胞内のミトコンドリアの機能が69%も向上し、若者のレベルにまで回復しました。細胞内でのタンパク質を組み立てる能力そのものが若返ることが確認されています。
『筋トレ(レジスタンストレーニング)』により、筋肉から放出される「マイオカイン」という物質には、抗炎症作用や認知機能の改善効果が期待されています。まずはスクワット10回から始めてみましょう。
(具体的な方法)
基本的なエクササイズ:
スクワットや腕立て伏せなど、体重を使ったエクササイズから始めると良いでしょう。
例えば、スクワットを10回行うことからスタートし、無理をせずに徐々に回数を増やしていくという方法が良いでしょう。
筋トレとHIIT(高強度インターバルトレーニング)を組み合わせることで、より効果的にミトコンドリアを活性化させることができます。
HIITで心拍数を上げた後に筋トレを行うと、筋肉の質も向上しやすくなります。
これらの運動を定期的に行うことで、ミトコンドリアの質を高め、老化を防ぐ効果が期待でき、継続は力なり、続けることが大切です。
睡眠は単なる休息ではなく、細胞の修復と有害物質の排出を行う重要な時間です。
睡眠中、脳内では『グリンパティック系』と呼ばれるシステムが活発に働き、日中に蓄積された老廃物(アミロイドβなど)の洗浄、つまり排出が行われます。
このとき、不要な物質を洗い流す役割を果たしているのが脳内に流れている脳脊髄液ですが、特に深い睡眠中にこの機能・システムが強化されるため、質の高い睡眠が脳の健康に不可欠なのです
質の高い睡眠のためにできる具体的な方法
寝る直前のスマホを避ける:
ちなみにブルーライトは睡眠ホルモン・メラトニンの分泌を妨げてしまいます。
寝る前1時間はスマホやパソコンの使用は控えるようにします。
深部体温を下げる:
寝る前のお風呂は体温を上げ、その後に体温が下がってきますので、よりスムーズに眠りに入ることができます。
体温が下がると、成長ホルモンの分泌が促進され、細胞の修復が進みます。
寝室環境の整備:
寝る所の環境は、静かで暗い環境を整えることが重要です。
場合によっては遮光カーテンを使用したり、耳栓を使ったりして、外部の音や光を遮断するなどの空をしてみても良いでしょう。
横向きで寝る:
☆最新の研究では「寝る姿勢」が注目されていて、仰向けやうつ伏せよりも横向き(側臥位)で寝る方が、脳の老廃物を洗い流す効率が高い可能性が示唆されています。
まだあくまでも可能性の段階の話ですが、重力や血管の配置の関係で、脳脊髄液がスムーズに循環しやすくなるためと考えられています。
リラックス習慣:
瞑想や深呼吸を行うことは、心身をリラックスさせ、質の高い睡眠を促進します。
特に、ゆっくりとした呼吸は脳の活動を落ち着け、老廃物の生成を抑える効果があります。
瞑想や深呼吸をしてみるというのも一つの方法です。
一応、具体的な方法をいくつかあげてみましたが、これはいいかもと思ったことで、すぐ実行できることからやっていくとよいかもしれません。
いずれにしろ、寝る直前のスマホ(ブルーライト)を避け、細胞修復を促す「成長ホルモン」の分泌を最大化させていくことを意識しましょう。