免疫力を上げることは、いろいろな疾病の予防にもつながりますが、こうした免疫力アップの働きがある主要な漢方生薬を取り上げてみます。
漢方処方で一番多く登場するあの生薬
免疫力をあげる働きがある漢方生薬のうち、多くの漢方処方に配合されていて、約7割もの漢方処方に登場してくる生薬があります。
それは『甘草』(Glycyrrhizae Radix)で、Glycyrrhiza uralensis Fisher又は Glycyrrhiza glabra Linne の根で、その主成分は、トリテルペン配糖体のグリチルリチン(glycyrrhizin)になります。
甘草にはこのほかに、イソフラボンやリキルチン、イソリキルチン、フォルモネチン、ポリサッカロイド、ステロール、クマリン、アスパラギンなどの成分が含まれています。
生理的には、胃酸分泌抑制、副腎皮質ホルモン様作用、エストロゲン様作用、抗炎症、抗アレルギー、cAMPフォスフォジエステラーゼ阻害作用などがあります。
また、免疫に対する作用としては、インターフェロンなどのサイトカインの分泌を促してT細胞やナチュラルキラー細胞の働きを高めることで免疫力をサポートします。
家庭料理でもよくでてくる漢方生薬
免疫力をアップしてくれる漢方生薬の1つとして、家庭料理で使われる『大蒜』があります。
大蒜は、ニンニクの生薬名で、中央アジアのキルギス地方原産と言われていて、中国を経由して日本に伝わりました。
ニンニクには、強力な殺菌作用があると同時に、マクロファージやナチュラルキラー細胞の働きを高め免疫力をサポートする働きがあることが知られています。
ニンニクを細かく刻んだり、噛み潰すと独特のニオイがでてきますが、これはニンニクに含まれているアリインにアノイリナーゼが作用してアリシンになるからで、このアリシンが、強力な抗菌、抗ウイルス、抗カビ、抗炎症、抗凝血作用を発揮します。
人参は人参でもまったく別物
単に人参というと、カレーライスやきんぴらで使われる人参を連想する人も多いと思いますが、これはいわゆるキャロット(carrot)でセリ科に属する植物になります。
一方、漢方で使われる人参は、オタネニンジンと呼ばれるもので、ウコギ科になり、全然違うものになります。
とはいっても、セリ科もウコギ科も植物分類学上は、同じセリ目になっています。
オタネニンジン(Panax ginseng)は、日本では古くより朝鮮人参と呼ばれていた、通常の料理に使う人参に対して、薬用人参という言い方もされてきました。
朝鮮人参の成分としては、サポニンのジンセンノシド、精油のβ-エレメン、パナキシノールなどが知られていて、 免疫力アップの作用があるのは、このうちのジンセンノシドになります。
ジンセンノシドは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞の働きを刺激するとともに、インターフェロンなどの生成を促して免疫力を高めます。