思考力を司る器官といえば『脳』になります。ところが高性能な脳を持たない動物はどうなのでしょうか。
例えば『ミミズ』。
ミミズの不思議
ミミズは、オスとメスの両方の生殖器を持っている両性具を持ち、雌雄同体でオスメスの区別がないことで有名です。
このミミズですが、『ミミズには脳がない』という人もいます。
しかし、ミミズは夜と昼の光の強弱を感じて、一定の条件がそろうと地中から地表へ這い出してきたりもします。
また地表を這いまわり、落ち葉や小枝を自分が食べられるものか判断したりして生きています。
実は、人間をはじめとした脊椎動物のような立派な脳はありませんが、それに代わるようなしくみはミミズにもあります。
ミミズは環形動物に属しますが、体節ごとに神経節を有するはしご状神経系というものを持っていて、そこが脳として働いているのです。
しかし、このような構造で高度な思考能力を発揮できるとは思えず、ミミズの行動のほとんどは反射によるものではないかと考えられます。
ミミズで考える腸の思考力
立派な脳の機能をもたないミミズですが、自分で食べられるものを判断し、取捨選択しています。
人間の場合、立派な脳を持っているにもかかわらず、食用のキノコと良く似ているということで、似たような毒キノコを食べてしまい医療機関のお世話になったなどというニュースがよくあります。
脳は見た目などから食用のキノコと毒キノコを区別できなかったために、毒キノコを食べてしまうという行為に至ったわけですが、毒キノコを食べると嘔吐や下痢を起こしたりします。
これはある意味、腸がこれは危険と判断して、嘔吐や下痢を引き起こして体外へ出そうとしていると考えることもできます。
実は、腸には大きな神経細胞のネットワークがあるのです。
腸に広がる神経細胞のネットワーク
体のいろいろな器官は、脳の支配を受けていて、脳の命令によって働いたりしています。
もちろん、消化器官は自律神経の影響を受けているのですが、脳死になったとしても腸はひとりで機能し続けることができます。
こうしたことから、腸は脳の指図を受けることなく独自の判断で動くことができると考えられています。
人間の腸内には、約1億個の神経細胞があって、網目状の神経ネットワークを築いているのです。
この数は、さすがに脳の神経細胞の数には及びませんが、腸内の神経ネットワークにおいて思考や情動に影響をもたらす多くの情報がやり取りされているのではないかと考えられています。
そしてこの腸の働きに大きな影響を与えているのが腸内細菌と言えます。
さらに腸はセロトニンやドーパミンといった幸せの感情と深く関係がある物質を生産しています。
したがって、心の健康のカギは腸が握っているのではとも言われるくらいなのです。
遊び人の脳 vs 堅実派の腸
目の前においしそうなものが出てくると、ついつい誘惑に負けてお腹がいっぱいなのにもかかわらずパクリと食べてしまうのは、意志薄弱な脳が欲望にとわれてしまったからです。
こうしたときどきお調子者の遊び人ともいえる脳とは対照的なのが堅実派の腸です。
腸は体にとってよくない状態が続くと、便秘や下痢などの状態となり不調を訴えます。
ある意味、腸の思考は脳をも超えていると言うこともできるのかもしれません。