漢方の本場といえば中国ですが、同じ漢方でも中国と日本ではその処方の考え方からして違います。
日本と中国の漢方
日本で漢方薬というと、東洋医学の薬物治療で、複数の生薬を一定の決められたルールに基づいて組み合わせて漢方処方として治療していきます。
しかし、中国では生薬のことを「中薬(ちゅうやく)」と呼び、漢方処方の基本形は「方剤(ほうざい)」と呼び、「漢方薬」という名称は使わないようです。
漢方関連の書籍をみていると、「中医学(ちゅういがく)」という文字を目にしますが、「中医学」とは文字通り「中国伝統医学」のことであり、中薬による治療(日本でいう漢方)、按摩、導引、鍼灸といった治療法が入ります。
漢方≠中医学
そうすると、なんだ中国で中薬を使った中医学が、日本でいう漢方なのねと思うかもしれませんが、厳密に言うと、日本の漢方は中医学とは違います。
日本では江戸時代、オランダから入ってきた西洋医学のことを蘭方と言っていましたが、それより以前から中国の漢の時代の医学が入ってきていました。
西洋から蘭方が入ってきたことで、それと区別しようと、中国の漢の時代から入ってきていたものを「漢方」と呼ぶようになったのです。
漢方薬・方剤の種類の差
中国の方剤は非常に多く、中医学の病院で使われる中薬は700種類にものぼり、方剤においても、大学の中医内科や中医婦人科などで学ぶ方剤だけでも600種類余りにもなります。
さらに中医外科やその他の科目でも多くの方剤があります。
一方、日本では、入手できる生薬はだいたい350種類、漢方製剤は200種類余りと中国に比べるとかなり少なくなっています。
そもそも日本では販売されている漢方薬は、厚生労働省が承認許可したものに限られているため、これが日本での処方の数の少なさの非常に大きな原因となっていて、ネットや本などで乗っている中国の方剤なのに、日本の薬局にはないというものが多くなっていて、どうしても入手したいのであれば、個人輸入という形になってしまいます。
中国では入手できるのに、日本では手に入らないという方剤がたくさんあるということになります。
また、日本では基本的には「〇〇湯」というように決められた処方の基本形をそのまま使いますが、中国では、中薬の配合比率を変えたり、別の中薬を加えたり、患者の証に合わせた加減法がよく行われています。
日本生まれの正露丸や改源
正露丸や改源といえば、聞いたことがある薬だと思いますが、洋薬に生薬を配合するという形などで、実はこれらは日本で独自に考案されたものです。
正露丸は、木クレオソートに、アセンヤク、オウバク、カンゾウという生薬から構成されています。
改源は、風邪の諸症状を緩和する風邪薬として、アセトアミノフェン、メチルエフェドリン、無水カフェインに、カンゾウ、ケイヒ、ショウキョウを配合しています。