アレロパシーという言葉を聞いたことがあるという人は少ないと思います。
医学や薬学系の勉強をされている方でも、はじめて耳にするという人が多いと思います。
生化学辞典などには記載がありますが、アレロパシーとは何なのでしょうか。
アレロパシーとは何ぞや
『アレロパシー』(Allelopathy)とは、強いて日本語で言えば『他感作用』と訳されたりしますが、「植物が放出する化学物質が、他の生物に対して阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象」を指します。
植物が成長していくために、邪魔となる他の植物や虫に対して、殺菌作用を示したり、成長・発芽を抑制させたり、忌避作用などにより阻害したりします。
アレロパシーは、1937年で、オーストラリアの植物生理学者ハンス・モーリッシュ博士により提唱されていて、ギリシャ語のAllelo(相互)とPatheia(被害)を組み合わせた造語になっています。
農業にも利用されるアレロパシー
アレロパシーは農業にも利用されています。
例えば、マリーゴールドは、アレロパシー作用をもつ植物として有名で、その葉や根からテルチオフェンという物質を分泌しますが、この物質がアレロパシー成分で、殺虫作用を有しています。
マリーゴールドによって、土壌の線虫などに殺虫効果があるのです。
ヨモギなどは、ポリアセチレンを分泌し、それにより他の植物を寄せ付けず繁茂していきます。
手入れのできない遊休農地の活用法としてソバが利用されたりしますが、ソバは、成長が早く他の雑草よりも先に葉を広げて日光を遮ったり、養分の吸収力が強いことから、ほかの雑草との競合に強いとされています。
そのうえ、ソバには多量のルチンや没食子酸、カテキン、ファゴミなどのアルカロイドといった他の植物の成長を阻害するアレロパシー成分をもっていると言われ、こうした面からも雑草との競合に強くなっています。
薬や健康成分としても使われているアレロパシー成分
アレロパシー成分は、医学面でもいろいろと利用されてきています。
ケシの未熟果から抽出生成したベンジルイソキノリン系アルカロイドのモルヒネは、強力な鎮痛作用・鎮静作用があり、アレロパシー成分です。
有名なところでは、漢方生薬の甘草に多く含まれているグリチルリチンもグリチルレチン酸に糖が結合したトリテルペン配糖体のアレロパシー成分で、潰瘍の治療や去痰作用などで利用されています。
また、ハッカなどに含まれるメントールも抗炎症・鎮痛などの様々な生理作用があり、アレロパシー成分の一つになっています。