長崎大学の新型コロナの予防・治療に対する5-ALA(5-アミノレブリン酸)の効果は、まだ培養細胞における感染実験での段階ですが、臨床試験も開始されているということで、いろいろ期待できるところです。
さて、この5-ALA(5-アミノレブリン酸)とは、どのようなものなのでしょうか。
なお、わかりやすくイメージで見たいという人は、コチラの動画も参考にしてください。
5-ALA(5-アミノレブリン酸)が多く含まれる食材
5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、体の中でグリシンを原料として生成されているアミノ酸です。
毎日600~700mg生成されていて、それと同じ量が代謝されているといわれています。
そしてヘム蛋白として体に60~70g存在しています。
5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、多くの動植物に存在しているアミノ酸ですが、特に5-ALA(5-アミノレブリン酸)を多く含む食品としては、赤ワイン、日本酒、黒酢、たこ、いか、バナナ、納豆、醤油、ピーマン、ほうれん草などがあります。
5-ALA(5-アミノレブリン酸)の作用
5-ALA(5-アミノレブリン酸)が新型コロナの予防や治療に効果が期待できるとされた長崎大学の研究ですが、5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、体内で8分子集まるとプロトポルフィリンというものになり、そこに鉄分子が入りこむとヘム蛋白になります。
このヘムが、新型コロナウイルスの表面にあるスパイク蛋白質に結合することで、ウイルスの細胞への侵入をできなくするために、ウイルスの増殖を抑制し、予防や治療につながるのではないかと期待されているのです。
研究でみられた強い感染抑制効果は、培養細胞における感染実験で行われたものですが、今後、臨床での効果が期待されているところです。
癌診断にも用いられる5-ALA(5-アミノレブリン酸)
5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、ミトコンドリアでグリシンとスクシニルCoAからビタミンB6、合成酵素の働きにより作られていますが、加齢とともに、その量は減少してきてしまいます。
体の中で作られた5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、2分子集まって、ポリフォビリノーゲンを形成します。さらにこれが4分子、つまり5-ALA(5-アミノレブリン酸)が8分子集まって、ウロポルフィリノーゲンが作られます。
さらに、ポルフィリン骨格を持ったプロトポルフィリンになります。
このプロトポルフィリンは、レーザー光を当てると赤色に発光する性質を持っているので、光感受性物質として用いられます。
つまり、5-ALA(5-アミノレブリン酸)を入れることで、体内でプロトポルフィリンができますが、これが癌細胞に蓄積して赤色に蛍光発光させることで癌診断を行う光線力学診断に用いられるのです。
運動量が気になる方に5-ALA(5-アミノレブリン酸)が効くメカニズム
5-ALA(5-アミノレブリン酸)については、血糖が高めの方、運動量が気になる方、眠りの質に満足していない方などの機能性表示食品としても利用されています。
解糖系やクエン酸回路で作られたNADHやFADH、水素、電子は、ミトコンドリアの内膜にある複合体蛋白と反応し、電子がミトコンドリア内膜と外膜の間にある膜間腔にあるシトクロームに渡されます。
ここでエネルギーが生じますが、このエネルギーを使って、マトリクスにある水素が膜間腔に出ていきます。
すると、膜間腔が水素でいっぱいになり、濃度勾配ができます。すると、ATP合成酵素のところで濃度勾配により、水素がマトリクス側に戻ってきます。
この時、ATPが発生してエネルギーが産生されます。
水素の濃度勾配をつくり、ATPを産生させ、エネルギーを作り出しているシトクロームは、加齢とともに低下してしまいます。
このシトクロームの原料になっているのが、ヘムで、さらにヘムの原料になっているのが5-ALA(5-アミノレブリン酸)なのです。
そして、5-ALA(5-アミノレブリン酸)を摂取することで、このシトクロームの活性が高まることがわかっています。
さらに、5-ALA(5-アミノレブリン酸)からできたヘムは、筋肉のミオグロビンの原料にもなり、こうしたことから、5-ALA(5-アミノレブリン酸)は運動量の改善や抗疲労に効果が期待されているのです。
血糖が高めの方に5-ALA(5-アミノレブリン酸)が効くメカニズム
血糖値については、このように、ヒトの臨床試験も行われていて、糖負荷試験2時間値や、グリコアルブミン値が下がる、つまり血糖値を下げたという結果がでています。
実際の代謝においても、糖や脂質から、解糖系、β酸化、クエン酸回路を介して、ミトコンドリアの電子伝達系に入り、糖や脂質を消費させてATP、つまりエネルギーを産生する一連の代謝の中で、シトクロームの原料となる5-ALA(5-アミノレブリン酸)を摂取することで、電子伝達系をスムーズに回して、糖代謝、脂質代謝を効率よくしていくというメカニズムが成り立ちます。
このように、5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、そのメカニズムから言うと、血糖値を下げることはもちろん、脂肪減少も期待できるのです。
眠りの質が気になる方に5-ALA(5-アミノレブリン酸)が効くメカニズム
眠りの質に対しても、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われていて、睡眠の質の改善度スコアが有意に改善したという研究データがあります。
これは、5-ALA(5-アミノレブリン酸)を摂取することで、ヘムが作られ、そこからシトクロームが強化されることで、エネルギーの産生量があがり、セロトニンやトリプトファンが多くでき、メラトニンが十分に作られることで、睡眠の質の改善につながるのではないかと考えられています。