ヤセ菌、デブ菌に関する科学的知見は、年々新しい知見がでてきていて、アップデートが激しい分野にもなっています。
デブ菌、ヤセ菌の研究
2013年9月、世界的な科学雑誌であるサイエンスに「腸内フローラの乱れが肥満体質の原因になる」という論文が、腸内細菌研究の権威であるワシントン大学のジェフリー・ゴードン氏らによって掲載され、肥満と腸内フローラの関係があきらかにされました。
この研究では、無菌マウスを使い、太っている人と痩せている人の腸内フローラを移植し、マウスの腸内にヒトとほぼ同じ腸内フローラを定着させることで、太った人の腸内フローラを持ったマウスと、痩せている人の腸内フローラを持ったマウスになり、約1カ月間、同じエサと運動量で育てていきます。
すると痩せた人の腸内フローラをもったマウスは、特に変化がみられなかったのに対し、太った人の腸内フローラを持ったマウスは、脂肪がどんどん増えて太ってしまいました。
このことから、腸内フローラが肥満に大きく関係しているということが示唆されました。
ヒトの腸内には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息していて、重量換算すると1から~1.5kgあると言われています。
その中で、バクテロイドータ門、バシロタ門、シュードモナドータ門、放線菌門が腸内細菌のしてんのうで、この4つの門でほとんどを占めています。
その中でも、バクテロイドータ門とバシロタ門の2つで9割を占めます。
日本人のヤセ菌情報のアップデート
海外では太っている人では、バシロタ門が多く、痩せている人にバクテロイドータ門が多く、バシロタ門はデブ菌と言われたりしてきましたが、日本人に関していうと当てはまらないというか、むしろ逆だとも言われています。
最近になって、少なくとも日本人に限っては、バクテロイドータ門イコールヤセ菌、バシロタ門イコールデブ菌ということはあてはまらないということが、わかってきました。
2022年、神戸大学の研究チームが日本人6101人を調査した結果が論文発表されていて、肥満体型の方が、ヤセ菌であるバクテロイドータ門の割合が多かったという結果、つまり海外での肥満体型の人はヤセ菌のバクテロイドータ門の割合が少ないという結論とは逆の結果になっていたのです。
別の論文では、ヤセ菌であるはずの「バクテロイデーテス門」は、食べ物からより多くのエネルギーを吸収するため、痩せるどころか逆に太りやすいという衝撃的な結果も出ています。
日本人のヤセ菌は?
日本人に多いヤセ菌、太りにくくなる菌と言われているのが、バシロタ門に属するブBlautia wexlerae (ラウティアウェクセレラエ)で、グラム陽性菌の偏性嫌気性菌になります。
Blautia wexlerae は、食物繊維やオリゴ糖、乳糖、フコースなどの糖をエサとして、発酵をして、短鎖脂肪酸である酢酸をはじめ、乳酸、コハク酸、水素などを生成するほか、アミノ酸のオルニチン、Sアデノシルメチオニン、アセチルコリンなども生成します。
20歳から76歳のの日本人男性と女性における内臓脂肪蓄積とBMIと、性別ごとに層別化した腸内細菌叢の関係を調査した結果、ブラウティア属は、性別に関係なく、日本人の内臓脂肪蓄積と有意に負の関係を示した唯一の属であったという研究結果も出ています。
Blautia wexlerae が産生するオルニチンは、アミノ酸の代謝をサポートして体内の脂肪燃焼を助けるとともに、筋肉量の増加をサポートして基礎代謝を向上させます。
Blautia wexlerae は、短鎖脂肪酸である酢酸を生成し、これが短鎖脂肪酸の受容体がある脂肪細胞や神経細胞に働くことによって、脂肪の蓄積が抑制され、全身の代謝が活性化します。
ポイントまとめ動画