『生薬(しょうやく)』は医薬品や医薬品原料になる天然物で、動植物の薬用部分はもちろん、細胞内容物や分泌部うt、鉱物なども生薬になっています。
日本薬局方と生薬
日本薬局方にも、生薬は約200種類収載されていています。
また異本薬局方に収載されている医薬品の約4割は、生薬か天然由来になっています。
生薬といえば漢方薬というイメージがあるかと思いますが、漢方処方以外にも、漢方エキス製材や生薬製剤などの医薬品製造原料になるほか、伝統医学や民間療法にも使われています。
漢方医学・中医学では、生薬はそのまま乾燥せずに、修治と呼ばれる加工処理をする場合もあり、例えば附子などは、高圧蒸気処理をした後、食塩水に浸し、水酸化カルシウムを散布するなどして加工しますし、乾薑は湯通ししたり蒸したりします。
海外の生薬・ハーブの書物の歴史
ヨーロッパでは、古くは『エーベルスパピルス』に700種類以上の生薬と811処方が収載されていましたが、その後、ギリシア時代になり医学の父と呼ばれるヒポクラテスが登場します。
そして、ローマ時代になると、デオスコリデスが、ギリシア本草の『マテリア・メディカ』が系統的天然薬物書としてできあがります。
中国では、後漢の時代、神農本草経(しんのうほんぞうきょう)が、中国最古の本草学書として張仲景(ちょうちゅうけい)や華佗(かだ)らによって作られ、365品の生薬を人体に与える作用と毒性によって、上薬、中薬、下薬に分類しています。
また、傷寒雑病論は、張仲景が、急性熱病・伝染病と慢性病の治療に関する医術書として作られ、後に、急性熱病・伝染病治療に関する傷寒論と、慢性病治療に関する金匱要略に分かれて刊行されました。
さらに黄帝内経は、基礎医学書の素問(そもん)と、臨床医学書の霊枢(れいすう)などからなったまたまった伝統医学書で、中国最古の古典と言われています。
明代になると、本草綱目が李時珍によってつくられ、1892種もの生薬が収載されています。
日本の生薬・ハーブの書物の歴史
日本では、808年に大同類聚方(だいどうるいじゅうほう)が、日本最古の医学書として、出雲広貞(いずものひろさだ)や安倍真直(あべのまなお)によって、全100巻として出され、日本最初の公定薬局方とも言われています。
984年には医心方(いしんほう)が、丹波康頼より作られ、これが現存している日本最古の医学書と言われています。
国際的な生薬
生薬というと中国というイメージがあり、日本で栽培されているか中国から輸入されているものがほとんどという感じがしますが、オウゴンやキキョウ、サイコ、トウキ、ニンジン、ビャクジュツ、ブクリョウなどは韓国から、アロエ、ウコン、センナ、モッコウなどはインドから、アフリカからはアロエやチョウジ、ヨーロッパからはウワウルシやゲンチアナ、南米からはトコンなどが輸入されています。