私達の腸内には、500~1000種類、100兆個もの腸内細菌が生息していると言われています。
それらは、様々な種類の菌が一面に広がるようになっていて、まるでお花畑のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。
糖尿病と関係が深い腸内細菌
アメリカのシダーズ サイナイ医療センターの研究によると、糖尿病と腸内細菌とは深い関係があって、2型糖尿病のリスクを高めているのではないかと推測される腸内細菌がある一方、逆に糖尿病のリスクから保護してくれている働きをもつ腸内細菌もいることがわかっています。
例えば、コプロコッカス属の腸内細菌は、消化や吸収をサポートし、免疫機能に関わる働きをする善玉菌として知られていて、ほとんどの人はこのコプロコッカス属の腸内細菌を保有していますが、人によって多かったり少なかったりします。
そして、このコプロコッカス属を腸内細菌として多くもっている人は、インスリン感受性が高く、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きやすい傾向があることがわかっています。
マイクロバイオーム
米国の企業に、「マイクロバイオーム・セラピューティクス」という会社があります。
『マイクロバイオーム』とは、ヒトの体に棲んでいる細菌全体を指す言葉で、特に欧米では、数的にヒトの体に棲んでいる細菌のほとんどが腸内細菌で圧倒的に多いため、この『マイクロバイオーム』という言葉が、「腸内フローラ」とほぼ同義に使われたりすることもあります。
「マイクロバイオーム・セラピューティクス」は、イヌリンとβグルカン、そしてブルーベリーを原料としたポリフェノールの天然食品成分から、腸内フローラを利用した糖尿病の薬を開発しました。
イヌリンは、ごぼうやタマネギに多く含まれ、天然の痩せ薬と言われる短鎖脂肪酸の原料になり、βグルカンは、大麦などに多く含まれている章持つ繊維で、腸内細菌のエサとなるとともに、腸内環境を整える働きがあります。
その結果、腸内で善玉菌の働きをサポートするプレバイオティクスとして働き、この薬を飲むと食後のインスリンが出やすくなり、血糖値の上昇が抑えられるのです。
短鎖脂肪酸と糖尿病
腸内細菌が作る短鎖脂肪酸は、腸を刺激してインクレチンという膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促す働きがあるホルモンを分泌される効果があります。
従って善玉菌が活性化され、短鎖脂肪酸の生産量が増え、それにより腸が刺激されてインクレチンというホルモンが多く分泌され、それが膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促し、血糖値を下げることによって、糖尿病の治療に有効ということになるのです。
糖尿病の薬にはいくつかありますが、食物繊維などの普通の食品に含まれている成分で、腸内細菌に働きかけ、それにより糖尿病を治療していくという新しい選択肢がどんどんと開発されています。