蛇にちなんだ生薬たち | 健康トピックス

ヘビというと、生理的に嫌いという人もいると思いますし、ましてや毒ヘビを連想して恐ろしいと思う人もいる人も少なくなく、人間から嫌われ偏見を持たれる傾向がありますが、医学の世界では洋の東西を問わず、人間の健康に貢献してくれていて、ヘビは神聖なものとして扱われたりもします。

ギリシャ神話では、ヘビは病を治す神聖なものとされ崇められていますし、中国医学においても北方の神である玄武は亀の甲羅にヘビが巻きついた形になっていて、亀が持つ防御力とヘビのしなやかさを象徴しています。

ヘビにちなんだ生薬たち

さて蛇にちなんだ生薬はそれほど多くはありませんが、蛇という漢字が入った生薬などを中心にいくつかありますので、早速ご紹介していきます。

まずは『烏蛇』があります。

この烏蛇という生薬は、烏梢蛇、烏風蛇、青蛇などの別名があり、蛇の一種である烏梢蛇の内臓を除去した全体を用いた生薬で、この烏梢蛇の脱皮した皮は蛇退皮という生薬にもなります。

烏梢蛇は全長が2メートル以上にもなる蛇で、体は青みを帯びた灰褐色で、背中の中央に黄褐色の二列の縞と、外側に細い黒色の縦線の模様があるのが特徴で、中国各地に分布していますが、主に揚子江より南の平地や丘陵地帯の草むらに多く生息していて、トカゲやカエル、魚などを捕食している無毒のヘビです。

味は甘鹹、性は平、帰経は肺・脾で、?風湿といって体内の風湿を取り除く働き、通経絡といって経路を通じて血行促進する働き、定驚?といって神経を落ち着かせ痙攣をおさえる働きがあり、リウマチ、関節の痛み、手足のしびれ、麻痺、皮膚疾患などに用いられます。

成分は、リシン、ロイシン、L-グルタミン酸があります。

『蛇退皮』は、別名蛇蛻(ダゼイ)、蛇皮と呼ばれるもので、神農本草経では、蛇蛻の名前で収載されている、いわゆる各種ヘビの脱皮した後の抜け殻を用いた生薬になります。

特徴や効果、成分は示した通りになっていますが、中国産の蛇退皮は、サキシマスジオ、ショウダ、ウショウダ、アカマダラなどのヘビの脱皮膜になっていて、日本産の蛇退皮は、アオダイショウやシマヘビ、ヤマカガシなどの抜け殻が用いられています。

成分はコラーゲンが主成分で、解毒、腫れの軽減、皮膚の痒みを止め、抗炎症といった効果があります。

漢方のほか、民間では黒焼きにしてゴマ油と混ぜて中耳炎に使うこともあるようです。

蛇という漢字がつかないのに蛇な生薬、反鼻

蛇という漢字が入っていないのに、蛇にちなんだ生薬として、しかも日本でよく使われるものとして、『反鼻』があります。

滋養強壮ドリンクなどにもエキスとして配合されていたりもします。
ハンピは、主に日本で使用される生薬で、マムシの皮と内臓を取り除き、乾燥させたもので、古くから強壮剤や解毒剤として利用されてきました。

反鼻は、成分としてはアミノ酸、タウリンを多く含み、滋養強壮、疲労回復、解毒作用があるため、滋養強壮ドリンクなどで利用されています。

反鼻は、中国伝統医学の本草書で漢方薬に関する知識を集約した名医別録に、腹蛇として収載されていて、その別名として反鼻蛇となっています。

もともとの原動物の特徴として鼻が反り返っていることから反鼻となっているとされていて、このことからクサリヘビ科のハブ属のヘビであると考えられていて、日本ではそれをマムシを代用品として使っています。

蛇じゃないのに蛇がつく生薬

蛇という漢字が入っているにもかかわらず蛇とは関係ない生薬もあります。

それが『蛇床子』で、オカゼリ Cnidium monnieri Cusson (Umbelliferae:セリ科)の果実になります。

抗菌、抗真菌、抗炎症作用がある生薬ですが、なぜ蛇という漢字が入っているのかというと、オカゼリは、蛇がすみかとするようなヤブに生えることから、または真実かどうかはさておき、蛇がオカゼリを好んで食べると言われてきたことから、オカゼリの別名が蛇床になったと言われています。

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