日本人の腸内細菌には、他の国とは異なり、炭水化物やアミノ酸の代謝機能が高く、ビフィズス菌が多くて古細菌が少ないという特徴があります。
また、水素が酢酸の生成で消費されることが多く、海藻類が持っているポルフィラン(多糖類)を分解する酵素が多くあります。
日本人は、こうした腸内環境の特徴があり、栄養素を効率的に取り込むことができると言われています。
腸内細菌と短鎖脂肪酸
『短鎖脂肪酸』は、化学的には炭素数6個以下の脂肪酸になりますが、腸内細菌が食物繊維をエサとして、短鎖脂肪酸を生成し、これが腸内を弱酸性に傾けることで、悪玉菌の過剰な増殖が抑えられ、腸の運動を活発にしています。
腸内細菌がつくる『短鎖脂肪酸』は主に酢酸、酪酸、プロピオン酸があります。
酢酸には、口から入ってきたウイルスや細菌などから体を守る免疫機能があり、腸管に存在しているIgAの産生を促し、このIgAが腸粘膜上のいろいろな病原体と結合し、体内への侵入を防いでいます。
プロピオン酸は、肝臓で代謝され、血中コレステロールを減らす働きがあると言われています。
ビフィズス菌と酪酸菌
善玉菌と言われる腸内細菌の代表選手といえば、ビフィズス菌ですが、ビフィズス菌は食物繊維、レジスタントスターチ、オリゴ糖などをエサとして、短鎖脂肪酸の酢酸と乳酸を作り出します。
一方、酪酸を作り出すことができる酪酸菌は、腸内を弱酸性にし、酸性を嫌う悪玉菌の増殖を抑えます。
さらに酸性を好む善玉菌有利な環境を作り出し、大腸の粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーの約60~80%を提供します。
酪酸菌は、制御性T細胞の活性化作用もあり、この細胞はちょうどよい免疫力を保つのに貢献していて、免疫力の暴走を防ぐ働きもあります。
大腸の粘膜上皮には、水分やミネラルを吸収したり、バイア機能などの重要な役割がありますが、ここに酪酸をエネルギーとする力を与えることから、酪酸菌は腸の健康を左右しているといっても過言でないのかもしれません。
また酪酸菌は芽胞に包まれているため、胃酸や熱に強く、抗生物質にも強く、生きたまま腸まで届きます。
酪酸菌はどうやって摂るのか
酪酸菌は、酸素が苦手な菌であり、また独特の臭いなどがあるので、酪酸菌を直接摂取しようと考えるとすると、それは糠漬けぐらいしかありません。
ではどうすればいいのかというと、酪酸菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂るようにすると良いでしょう。
酪酸菌のエサとしてオススメなのが水溶性食物繊維で、わかめやゴボウ、干しシイタケなどが良いでしょう。
また週に3回ほど、息が上がるようなやや強度の高い運動を30分から1時間、6週間続けることで、酪酸菌が増えたという報告もあります。