西野ジャパンが強豪に勝つ化学反応を生み出した秘訣とは

サッカーの2018FIFAワールドカップがロシアで開催されていますが、日本はグループリーグで格上のチームを次々と破り大金星をあげています。

弱小チームだったサッカー日本代表

日本は、FIFAランキングで言うと61位で、日本と同じグループに入った国をみると次のようになっています。

ポーランド : 8位
コロンビア : 16位
セネガル  : 27位
日本    : 61位

2018FIFAワールドカップ ロシア大会に出場している32チームのうち、日本よりもランキングが下のチームは、70位のロシア、67位のサウジアラビアしかありません。

このランキングからしても、日本はワールドカップに出たチームの中では弱小チームといってもいいでしょう。
さらにW杯本戦の2ヵ月前に監督が解任され、西野ジャパンとなってから時間がありませんでした。

多くの人が、
日本は3敗するだろうな・・・
1つ引き分けが取れたら上出来なんじゃないかな・・・

こう言われている中で、ランキング16位の南米の強豪コロンビアに競り勝ち、体力・パワーに優るセネガルとも引き分けました。
ワールドカップでアジアのチームが南米のチームに勝ったのは初めてであり、まさに "GIANT KILLING" (大金星)です。

ワールドカップが始まる前に、ここまでの西野ジャパンの活躍を予想できた人はそう多くないでしょう。

いかにして弱小チームのサッカー日本代表が強豪に勝ったのか

どうして弱小チームであるサッカー日本代表が、南米の強豪コロンビアに勝つことができたのか。
それを考えるヒントが面白い漫画に隠されています。

サッカー漫画というと、

キャプテン翼―Road to 2002 (1) (ヤングジャンプ・コミックス)

BE BLUES!〜青になれ〜 1 (少年サンデーコミックス)

アオアシ 1 (ビッグコミックス)

DAYS(1) (講談社コミックス)など

いろいろありますが、これらとは一線を画した面白い視点で描かれた漫画があります。
どこが面白くユニークなのかと言うと、普通の漫画は選手を中心に描かれていきますが、この漫画はサッカー監督の視点で書かれているという点です。

その漫画は『GIANT KILLING』 、略して『ジャイキリ』です。

GIANT KILLING(1) (モーニング KC)は、まさに「大金星」というタイトルですが、大逆転劇を演じられるチームを作っていくサッカー監督が主人公になっています。

 》『GIANT KILLING』 を立ち読みしてみる

こう言うと、そこらへんの本屋で売っている「陳腐なビジネス書のハウツー」をただサッカー監督版にしただけなんじゃないか?と思う人もいると思いますが、この漫画はちょっと変わっています。

オーソドックスな監督像として、ビジネス書のハウツーにしたがっていくと、だいたい次のような感じになるかと思います。

選手たちの気持ちをグッとつかむ情熱的だけど、論旨明快なプレゼンテーションで、チームの雰囲気を良くすることからはじめる。
そしてその上で自分が得意とする鉄板の戦術を伝授して徹底的にやり切らせ、結果が出して活躍した選手を褒め、結果がでなければ叱咤激励をしてモチベーションを高めていく・・・

しかし、そんな方法とは違う方法で、チームを強くしていきます。

監督はあえて混乱を巻き起こすような練習を仕掛けます。
当然選手は戸惑い、もめ始めます。
しかし、混乱を通して、選手は今まで見えていなかったことに気づき、考えもしなかったことを考え始め、行動が変わっていきます。

非常識極まりないように見える監督の行動一つ一つが、チームづくりの理論にかなったきわめてロジカルな行動になっていたのです。

ピースとピースがぶつかりあって化学反応が起こる

サッカーで思いもしない連携プレーが出たとき、よく「化学反応が起きた」という言い方をすることがあります。
こうした化学反応が起こる組織づくりは、ジグゾーパズルでの作品の完成に通ずるものがあります。

ジグゾーパズルをやったことがある人もいると思いますが、いろいろな形のピースを組み合わせて、一つの作品を完成していくものです。

チームづくりも、選手一人一人がピース、そしてそれを組み合わせ最終的な作品にしていくのが監督ということで、ジグゾーパズルを組み立てるのに似ているところがあります。

ジグゾーパズルは2つのステップがあります。
1.ピースの形、ピースの色や模様を参考にしてピースを分類する。
2.分類したピースをピースの凹凸に合わせて組み合わせていく。

ステップ1では、この人は外交的で腰が低いから営業部向きだ、あの人は内向的だが真面目でコツコツタイプだから管理部向きだといったように、なんとなくそれっぽい役割分担を与えて人員配置をするという段階です。
個人個人が与えられた自分の持ち場を守り、他人の仕事には口をはさまないといったイメージになります。

ステップ2では、形や書かれた図柄が違うピース、つまり個性を持った個人と個人をぶつけ合わせていきます。
あれは違う、これも違うといった形です。個人個人が個性をぶつけあって自己主張し、それぞれの強みが活かされた役割分担を探っていき、最終的にピッタリとしたものに仕上がっていきます。

多くの組織は、ジグゾーパズルでいうこのステップ1の段階で止まってしまっています。
なぜならば、ピースの凹凸の組み合わせは試行錯誤をしたりと、時間もかかるし、非効率的だからやろうとしないのです。

しかし、個性をもった凹凸のあるピースをガチャガチャぶつけ合っているうちにピースがピタリとはまり、そうなった時にはじめてメンバー同士の化学反応が起こり、今まででは想像もできなかったような高いパフォーマンスが発揮できるようになるのです。

化学反応を起こす組織をつくるヒント

西野監督の長所として、我慢強さ・寛容さがあると言われています。
多くの監督は、自分の思い描いたビジョンがあり、そのとおりのプレーに近づけようと、我が出てしまう場合がほとんどです。
選手を信じ、選手に託す力があるか。

西野監督は、自分の戦術を選手に押しつけるのではなく、まずは選手が考えていることをお互いに出し合わせて、それを聞いた上で、それじゃみんなでどう考えていこうかということの中で、選手にヒントを与え考えさせていきました。

まさに監督が選手に押しつけるのではなく、いろいろと意見を出させ、ピースとピースをぶつけ合い、議論して、強豪にも勝つことができる化学反応を起こせるチームにつくりあげたのです。

『GIANT KILLING』(『ジャイキリ』)は、ユニークな視点の漫画として、それだけでもいろいろと得るものがたくさんあります。
GIANT KILLING(1) (モーニング KC)は、監督の行動、そしてその裏に隠れた意図など読み解きながら読みすすめていくと勉強になります。

今いるメンバーでいかに勝つか。
周囲の期待を超える成果を生み出す、大金星をあげれるチームづくりの方法。
強豪国のようにカリスマ的リーダーやエースがいなくても勝つ。

一見奇抜にも思える監督の言動の裏にある思考プロセス、化学反応が起こるチームづくりの普遍的シナリオを体系的に共有するためにまとめられた本が、今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀です。

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