脳の回復力を考えるときに、『レジリエンス』という言葉があります。
この言葉は、変形した物質が元に戻ろうとする復元力を指す物理用語ですが、心にかかったストレスに対処する力という意味でも用いられます。
つまり、レジリエンスの低い心は、一定の負荷がかかると折れてしまいます。簡単なストレスで心が折れてしまうのです。
『レジリエンス』とは、心の平静を保つ能力と言えます。
レジリエンスに関する興味ある実験
レジリエンスに関連するマウスを使った興味ある実験が米国で行われています。
<参考:Krishnan V, et al. Cell. 2007; 131: 391-404.>
実験は、米国NYのマウントサイナイ医科大学のグループが行ったもので、攻撃性のあるマウスと一定期間同じケージに入れられてストレスで打ちのめされてしまっているマウスのグループを用意します。
そして、しばらく経ってから再び攻撃的マウスに自ら接触できるマウスと、怖がって二度と近づこうとしないマウスがいることが観察されています。
しばらく経つと再び攻撃的なマウスに自ら接触できるマウスは、レジリエンスのあるマウスということができます。
強いストレスがかかると、報酬を得た時に働く腹側被蓋野という部分のドーパミン系が活性化することがわかっています。
レジリエンスのあるマウスの場合は、脳内で腹側被蓋野と内側前頭前野との連絡が強化されて、脳内のバランスを取り戻そうとする働きが見られています。
このように、レジリエンスのあるマウスでは脳内のバランスを取り戻そうとするしくみが働くことがわかっています。
もし、このレジリエンスのあるマウスのように、脳内のバランスを取り戻すことができれば、ストレスに強い脳にすることができるということになります。
ピンチでも平静でいるためのエクアニミティ

『エクアニミティ』とは、Equaminity(平静)という意味があるマインドフルネスです。
『マインドフルネス』は、「今、この瞬間」を大切にする生き方のことで瞑想に近いものです。
ピンチでも慌てないようにするためのエクアニミティは、2つのステップで行います。
エクアニミティの第一ステップ
エクアニミティの第一ステップは、10分ほどマインフルネス呼吸をすることです。
呼吸に関わる感覚を意識するようにし、鼻を通る空気や空気の出入りによる胸やお腹の上下、呼吸の深さ、吸う息と吐く息の温度の違いなどを意識していきます。
雑念が浮かんできたら、注意を呼吸に戻します。雑念は当然のことなので自分を責めず、焦らずにもとのように呼吸に意識を戻していきます。
エクアニミティの第二ステップ
エクアニミティの第二ステップは、不安の対象を重い浮辺て、心の中でフレーズを繰り返します。
世の中とはそういうものだ! どんなこともありのまま受け入れられますように! といったようなフレーズを繰り返していきます。
自分が不安を感じているという事実を受け入れるようにするのです。
そうすることで副交感神経が優位になり、ストレスへの抵抗性と心のバランスがとれていきます。