脳こそが心のありかといわれるようになった18世紀頃より以前では、心は脳ではなく心臓にあると考えられてきました。
従って、HEARTには、心の他に心臓という意味もあるくらいですし、日本でも心臓は、心の臓器と書かれています。
最近では、睡眠と脳の働きについてもいろいろな研究が行われ発表されていますが、脳のしくみは複雑で、脳のそれぞれの部位の働きがわかったのですら、18世紀から19世紀にかけてで、神経伝達物質の作用が本格的に研究されてわかってきたのは、20世紀後半なのです。
いくえにも守られている脳
脳は、人間の体のいわば司令塔で、非常に重要な部分です。
だからこそ、硬い頭蓋骨でも守られている上に、髪でも守れれています。
脳の守りの壁は、頭蓋骨や髪だけの話しではありません。
頭蓋骨の中に入っていくと、硬膜とクモ膜があり、その内側には髄液があり、さらにその奥には軟膜があります。
頭蓋骨も含め、これらで脳をいろいろな種類の衝撃から守っているのです。
さらに、脳は髄液の中に浮かんでいる形になるので、衝撃を受けても髄液が衝撃を吸収してくれるため、脳本体は衝撃を受けにくいという体の構造になっています。
外からの衝撃に加え、脳の血管には、血液-脳関門おちうゲートがあり、有害物質や不要な物質が脳内に入ってくることをブロックしています。
1.4kgの淡い茶色のやわらかな塊
人間の脳は、重さ約1.4kgの淡い茶色をしたやわらかな塊で、大脳・小脳・脳幹に分けることができます。
昔は、脳は単なる神経の塊でしたが、そこから長い進化の過程で発達してきました。
呼吸や体温をコントロールする脳幹が最初に発達していき、その次に敏捷な動きや運動に関連した小脳が発達していき、その外側に複雑な精神活動を司る大脳が発達してきました。
脳はその外側にどんどん新しい機能をもった部分ができてきているので、逆に内側にいくほど古くなっています。
脳幹は、生命を維持して生物としての基本的機能を保っていくために重要な部分で、呼吸や体温などの機能を司っています。
小脳は、脳の中央部にあり、身体の運動をコントロールする働きがあります。
大脳の構造
外側にある大脳は、容量的にも大きな割合を占めていて、表層部分にあたり大脳皮質と、脳幹との境目にあたる大脳辺縁系に分けることができます。
大脳辺縁系は、間脳を取り囲むように存在していて、扁桃体や海馬といった部位があり、心のありかという点では、この大脳辺縁系が心に深く関係していて、いわゆる心の病気とも関連が深くなっています。
大脳皮質は人間で特別に発達した部位で厚さ3mmほど層になっています。
大脳皮質があるからこそ、人間らしい高度な精神活動ができるもので、人間の進化の過程で精神活動を発達させていくに伴い、その表面積をどんどん広げていき、最終的には新聞紙の大きさぐらいになりました。
こうなると収容しきれなくなり、折り目をつけて収容するようになったため、大脳皮質には複雑な深い溝に覆われた形になったといわれています。