『海馬』といえば、覚えるべきことを短期記憶として保存し、長期記憶にした情報を大脳に送り込んでいく役割があり、まさに記憶の中心として働く器官です。
海馬の働き
『海馬』は、大脳側頭葉の内側部、側脳室下角底部に位置していて、その形がタツノオトシゴのような形をしているところから名づけられています。
ちなみに、海馬は英語ではそのまま sea-horse(シーホース)となりますが、医学用語ではラテン語を使うことがも多くあり、hippocampus(ヒッポカンポス)といいます。
『海馬』は、短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる重要なところで、日常で起こったいろいろな出来事や憶えたことは、この海馬でいったんファイリングされ、整理整頓されてから、大脳皮質へと保存されていき、まさに記憶を仕分ける司令塔が海馬になります。
記憶する際に、記憶術を使う人もいますが、多くの記憶術が、無意味な文字や数字の羅列を、知っている言葉に置き換え、それをイメージして、エピソードを作り、エピソード記憶として記憶すると、覚えやすく忘れにくいと言われています。
海馬は、このエピソード記憶等の顕在性記憶の形成にも不可欠な部分になります。
記憶の仕分け
人間は、日常の駒かなことも全て覚えていたら、脳はパンクしてしまいます。
そこで、重要でないもの、不要なものは忘れ、重要なものを選んで長期記憶していますが、この仕分け作業を行っているのがまさに海馬になります。
よく、好きな科目は頭に入るんだけど、嫌いな科目や苦手な科目はなかなか覚えられないという経験はないでしょうか。
好きな科目や、自分の趣味のことであれば、あまり苦労もなくすらすらと覚えられるのは、好きなことをやっているという快感が主な原因で、この快感を伴う記憶は、海馬に「重要」と判断されて、強い信号として送られるために、長期記憶として残りやすくなります。
だから、趣味に関してのことや、自分の好きな科目は苦労なく、すらすらと覚えられるのです。
物事を覚えようとするときは、その対象に対して興味を持つことが大切であるということがわかります。
0.1%ほどの神経細胞が1日で
人間の脳は、1日あたり0.1%ほどの神経細胞が、新しいものと入れ替わっていると言われています。
こうした脳を鍛える一つの方法として、運動があげられます。
なぜならば、運動をすることによって、海馬の神経細胞が生成・発達するうえで不可欠な栄養素である「BDNF(脳由来神経栄養因子)」というタンパク質が分泌されるからで、実際に運動をすることによって海馬が大きくなるという研究報告もあり、1日40分ウォーキングしたグループは、海馬の容積がなんと1年後に2%前後も増加しました。
また、海馬はストレスに弱い部分なので、ストレスをうまく解消することも重要になってきます。