脳のしくみから考えるストレスをお酒で解消するリスク | 賢脳トピックス

仕事帰りに同僚と酒を飲みに行くと、 「嫌なことなんかお酒を飲んで忘れちまえ!」と言われたり、「酒は百薬の長、ストレス発散にはもってこいだよ」という話を聞いたという人は結構いるかと思います。

お酒におぼれる依存性のリスク

ところが一方で、キッチンドリンカーに代表されるように、アルコール依存症になってしまった人もいるという話も聞きます。

アルコール依存症は、文字通り飲酒のコントロールを失った状態で、重症になると毎日酩酊しているような状態になってしまいます。

ひどい人になると、常に酒を探し回る脅迫的飲酒欲求に陥る人もいます。

お酒にはストレスを即座に抑える強力な力があるのです。

不安や悩みがあるときに、お酒を飲むと、ものの数分で不安や悩みなんてどうだっていいという感じで消えてしまうという経験をしたという人も少なくないのではないかと思います。

もちろん酔っている時、一時的に忘れたり、考えにくくなったりするだけで。根本的解決にはつながっていないのですが、それにしろ、このようにストレスを抑える働きがあるのです。

一方、お酒には依存性があります。

お酒を一気に大量に飲むと、急性意識障害を起こし、いわゆる急性アルコール中毒になりますが、お酒は長期連用していても、振戦せん妄ウェルニッケ-コルサコフ症候群が起きたり、ひどくなると肝硬変になったりしてしまいます。

振戦せん妄は、頻脈になったり、汗が出てきたり、手指のふるえがでてきたりするもので、さらには幻覚・幻視を伴う意識障害を起こしたり、虫を取る動作などもするようになるものです。

ウェルニッケ-コルサコフ症候群は、飲酒によりビタミンB1が欠乏して起こってくるもので、記憶障害、運動失調などが起こってきます。

依存と報酬

お酒による依存性には、快感や覚醒を生じさせる報酬系の神経系が関与していて、これらの神経系は、お酒の欲求が満たされると活性化します。

人間では、ドパミン神経であるA10神経が報酬系の神経系と言われています。

お酒を呑むと不安や悩みが和らいでストレスが解消されるというのは、一種の報酬ですが、脳がこの記憶を覚えていて、お酒を呑むとまた不安や悩みを忘れさせてくれるということで、お酒にはまっていく人がいます。

アルコールは、扁桃体、側坐核にあるGABA受容体に作用して、GABAの放出を促します。
さらに、オピオイドペプチドも放出させることで、脳の側坐核という部位でドーパミンの放出が起こります。

これがドパミン神経であるA10神経という報酬系にはたらき、依存症となっていきます。

お酒はストレスも消すが一時的で体には悪い、ではどうしたらいいの?

お酒は確かにストレスを抑制する働きは強いのですが、全くアルコールが飲めないという人もいますし、一気に飲みすぎれば急性アルコール中毒になり、長期にわたって飲んでいると、ある?-る依存症のリスクもあります。

幸いなことに、ドパミン神経であるA10神経という報酬系は、依存物質がアルコールであれ、薬物であれ、ギャンブルであれ、ジョギングであれ、関係してきます。
つまり、ジョギングやサイクリングをしても、報酬系を刺激することができ、ストレスを発散することができます。

さらに、ジョギングやサイクリングをすることで、体が動かされ、GABAの働きが促進されて、ドーパミンが放出され、報酬系が刺激されストレスの発散につながることがわかっています。

ストレスに対する対処法は、一時的にお酒に逃げるのではなく、ジョギングやサイクリングといった運動を楽しむことが有用なのです。

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