仕事をするときに、周りに自分以外の人がいたほうがはかどるという人もいます。
自分以外の人がいると、ついついおしゃべりをしてしまい、作業効率が落ちるという人もいるかと思いますが、人によっては、一人でやるよりも早く仕事を終えることができたという人もいます。
競争がタイムを伸ばす
トリプレット(Triplett, N.)は、インディアナ大学で競争を扱った『時間計測や競争における元気・活力を発生させる諸要因』という論文を1898年に発表しています。
よくマラソンなどでも、お互いにライバルがいて刺激しあったほうが良いタイムが出ると言われています。
風よけに相手選手を利用するということもあると思いますが、それ以外の要素もありそうです。
野球などでも、お互いに良いライバル・好敵手がいたほうが、成績があがるとも言われます。
トリプレットはまず自転車競技において、時間を計測されたり、他者と一緒に走ることにより、20%ほどスピードアップにつながることをデータにより示しました。
社会的促進
そこで、今度は釣りのリールを子供にそれを巻かせて、一人で巻いたときと、他の子がいる時に巻いたときと、その巻くスピードを計測しました。
すると2人で並んでつり糸を巻いた時のほうが、一人で作業した時よりも糸巻き速度が上昇し、作業効率がアップしました。
このことをF・H・オルポートは、『社会的促進』と名付けました。
社会的抑制
ここで、「ちょっと待ったー!」と反論したいと思っている人もいるかもしれません。
私は会社でプレゼン発表したんですけど、他の人がいたことで緊張してしまって上手くプレゼンできませんでした。
他の人がいると、作業効率が上がるなんて間違ってないですか?
実は、このように他者が存在することで作業の質や量が低下してしまう現象は、『社会的抑制』と呼ばれています。
ハルの動因理論
なんか『社会的促進』と『社会的抑制』は、全く逆で、矛盾しているような気もするのですが、これに関しては、ザイアンス,R.B.がハルの動因理論をもって説明しています。
そのキーワードとなるのが、『個人の習得度』で、その作業に慣れているかどうかによって、社会的促進が起こるのか、社会的抑制が起こるのかが決まるというものです。
プレゼンで他人が見ていたため緊張して上手くいかなかったのは、プレゼンに慣れていないからということになります。
プレゼンに慣れている人は、他者がいると逆に張り切って、企画を提案できたりします。
野球の一流選手が、オールスターやシリーズなどでより一層大活躍するのは、それなりにスキルがあり慣れていて、より注目される中で張り切るからともいえるでしょう。
他人がいることで、慣れている人はより上手に、慣れていない人は緊張して力が発揮できずといったところで、普段よりも差がついてしまいがちです。
普段から、地道にスキルアップを図り、慣れていくことが大切なのかもしれません。