『定性試験』は、試料中に含まれている成分を確認・同定するためのものになりますが、いろいろな定性反応を利用して行われます。
その中でも似たような反応のものをまとめてみました。
硝酸銀でわかる無機イオンの定性反応
無機イオンというと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸塩、炭酸水素塩などいろいろとあり、定性反応も異なってきます。
『塩化物』は、硝酸銀を加えることで塩化銀となり白色の沈殿が生じ、これは過量のアンモニアには溶けるものの、希硝酸には溶けません。
さらに塩化物に硫酸と過マンガン酸カリウムを加えて加熱すると、塩素ガスが発生し、ヨウ化カリウムデンプン紙を青変させます。
『臭化物』は、硝酸銀を加えることで臭化銀となり淡黄色の沈殿を生じ、これは希硝酸を加えても溶けませんが、アンモニア水と希硝酸を加えると白濁します。
また臭化物は、塩素試液と反応させることで、黄褐色になり、これにフェノールを加えると白色の沈殿を生じます。
『ヨウ化物』は、硝酸銀を加えることで、黄色の沈殿を生じ、これは希硝酸には溶けませんが、アンモニア水には溶けます。
さらにヨウ化物の酸性溶液に硝酸ナトリウムを加えると黄褐色になり黒紫色の沈殿を生じ、これにデンプン試液を加えると、濃青色になります。
炭酸塩と炭酸水素塩を見分けるには
『炭酸塩』と『炭酸水素塩』を見分ける定性反応は、『フェノールフタレイン』になります。
『炭酸塩』に希塩酸を加えると、泡立ちがガスが発生し、これを水酸化カルシウム試液に通すと炭酸カルシウムができて白色の沈殿となりますが、これは『炭酸水素塩』でも起きる反応なので、『炭酸塩』か『炭酸水素塩』ということは検討がつきますが、どちらなのかはわかりません。
『炭酸塩』に硫酸マグネシウム溶液を反応させると、白色の沈殿を生じ、さらにこの沈殿は希酢酸によって溶けますが、『炭酸水素塩』に硫酸マグネシウムを加えても沈殿は生じず、さらにこれを煮沸すると、炭酸水素塩が炭酸塩となって炭酸マグネシウムの白色の沈殿がでてきます。
『フェノールフタレイン』は、『炭酸塩』と反応すると赤色になりますが、『炭酸水素塩』とはんのうしたばあいは、赤色にならないか、極めて薄い赤色にしかならないので、区別することができます。
炎色反応を用いた定性反応
無機物の定性反応には白金線を用いた『炎色反応』が用いられることもあります。
炎色反応が有用なのは、カリウム塩、ナトリウム塩、バリウム塩、カルシウム塩になります。
『カリウム塩』は、炎色反応によって淡紫色になり、炎が黄色の時、コバルトガラスを通していると赤紫色に見えます。
その他、炎色反応によって『ナトリウム塩』は黄色を呈し、『カルシウム塩』は橙色を呈し、『バリウム塩』は黄緑色を呈します。