大腸菌と酵母菌は、どちらも「〇〇菌」という形であり、大きな違いがない感じがしますが、生物学的にみると大きな違いがあるのです。
大腸菌と酵母菌を野球チームに喩えるなら
もし、大腸菌と酵母菌を野球チームに喩えるとすると、大腸菌はリトルリーグのチームで、酵母菌はプロ野球チームと言えます。
結論を先に言ってしまうと、大腸菌は原核生物で、酵母菌は真核生物になります。
ちなみに人間は真核生物になり、この点だけからすると、酵母菌は大腸菌よりもむしろ人間に近いということになります。
原核生物と真核生物
原核生物と真核生物の違いは、その細胞にあり、真核生物の細胞の中には、蛋白質の集合体からなる細胞内骨格があるのに対して、原核生物の細胞にはそのような構造はありません。
つまり、真核生物の細胞には、細胞核をはじめ、ミトコンドリア、アクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメントなどがあり、小胞体やゴルジ体などの膜構造がダイナミックに動くことができます。
また真核生物のDNAは末端が線状であるのに対して、原核生物のDNAは末端がない環状構造になっています。
さらに、原核生物の細胞では、蛋白質の情報を記録している遺伝子領域から1種類の蛋白質しか作れないのに対して、真核生物の細胞は、エキソンと呼ばれる配列を転写時に自由に選択することによって、多種類の蛋白質をつくることができます。
どちらが優れているのか
原核生物と真核生物の違いがわかったところで、ぶっちゃけどちらが優れているのかと問われたとき、多くの人が、それは感じからしても原核ってなんか原始的だし、真核生物のほうが原核生物よりも優れているんじゃないのというイメージをもつと思います。
しかし、それは大きな間違いで、視点を変えると原核生物は無駄をとことん省いてシンプルな形を追求していく形で新化した究極の形と考えることができます。
とことん無駄を省きシンプルを追及していったことで、原核細胞は真核細胞では不可能なほどの速度で分裂することができるので、限られて栄養源とスペースしかなかったとしたとき、原核細胞と真核細胞で生存競争となれば、真核細胞は原核細胞にとても太刀打ちできないのです。
そもそも原核生物である大腸菌と真核生物である酵母菌をどちらも「〇〇菌」としたこと自体で誤解をまねくことで、大腸原核菌、酵母真核菌とでもしてもらっていれば、原核生物か真核生物か間違えることはなかったと思いますが、すでに決められたものを変えるわけにもいきません。
しかし、〇〇細菌というようになっていれば、それは原核生物だとわかるようになっています。
原核生物は、真正細胞と呼ばれるグループと、古細菌(アーキア)に分けることができ、真正細胞には、大腸菌やサルモネラ菌が属します。
一方、メタン菌や好熱菌などの特殊な環境で生育しているものは古細菌に属します。
真正細胞の細胞壁には、ペプチドグリカンから構成されていますが、古細菌の細胞壁は、熱に対して極めて高い安定性がある蛋白質からなっています。