『褒めて伸ばす』という言葉がありますが、最近では自分から「僕は、褒められて伸びる人間なんです。」とアピールしてくる人もいます。
時代が変わった、褒めることが大切
仕事はやって当たり前、当たり前にできなければ叱られ、そうやって人間は成長していくものということで育てられた人達にとっては、何を甘ちゃんなことを言ってるんだ、やってできて当たり前、できなかったら努力が足らないんだから、スキルを磨く努力をするのが当たり前で、その対価としてお金をもらってるんだろと思う人も多いと思います。
叱られてなんぼ、見込みがあるからミスしたときに叱られるのであって、叱られなくなったら逆に見込みがないと判断されたと思えという時代からすれば、時代はずいぶんと変わるものです。
職場で褒められたことなんかないし、上司が部下を褒めているところなんてみたことがないし、社長賞でももらうぐらいのよっぽどのファインプレーでもしないかぎり、まず褒められるなんてことはないだろうという人にとっては、そんなできて当然とか、ちょっと自発的に工夫したぐらいで褒めるなんて、甘やかしみたいに思えるかもしれませんが、人間は誉めることがとても大切なのです。
褒めることの別の意味
よく褒めて育てるなどというと、人間ってのは、褒めればやる気が出て成長するもんだととらえている人も多いと思いますが、実は褒めるということは、そのことで脳の構造を変えて、より良い成長につながる可能性があることが確かめられています。
実際に、脳卒中の後遺症を抱えた患者さんを対象に、国際研究グループが米国や日本で調査をした研究では、歩行を改善するためのリハビリを行った後で褒められた患者さんは、褒められなかった患者さんに比べて、歩く速度が25%以上早くなったという結果がでています。
これは、最新のリハビリ器具や医薬品を利用しても、これほどの効果をあげるのは容易ではないレベルの改善なのだそうです。
注目される脳の報酬系
人間の脳には、報酬系と呼ばれているシステムがあり、なんらかの欲求が満たされた時に、脳は活性化してその個体に気持ちいいという感覚を与えるのです。
例えば、ノドが渇いて仕方がないときに冷たい水を飲むと、頭の中を「気持ちいい」という感覚が駆け巡り、このとき、報酬系が活性化してドーパミンを放出し、脳はその快感を得るために、それを求めるのです。
リハビリで褒められた患者が、褒められることで快感を覚え、また褒められるようにがんばり、もっと早く歩けるよううに自身の構造を変えようとする結果、必要な神経回路が強化され、より歩きやすくなっていくのではないかと推測できます。
だからこそ、褒めて育てるということは、理にかなっていることなのです。