地球温暖化が注目されていますが、昔は酸性雨(acid rain)がいろいろと話題にあがったこともありました。
もちろん酸性雨はなくなったわけでもなく、今でも問題なのですが、どうなっているのでしょうか。
酸性雨はなぜ降るのか
酸性雨(acid rain)は、石油などの化石燃料の燃焼により、イオウ酸化物や窒素酸化物ができ、これらが大気中で酸化されて硫酸や硝酸になり、それらが雨に溶けることで酸性雨になると言われています。
酸性雨によって、森林が衰退したり、水生生物の生態に影響が出たりします。
石油や石炭といった化石燃料を燃焼させることで、SO2やSOxなどのイオウ酸化物ができるとともに、空気中の窒素が高温化で酸化されてNO2やNOxといった窒素酸化物ができます。
これらが阿知期中で酸化されて硫酸と硝酸になり、レインアウトといって雲の中で雨滴が成長する過程で取り込まれたり、ウォッシュアウトといって降ってくる雨滴と衝突して取り込まれたりすることで、雨滴の中で硫酸や硝酸が解離して、水素イオン濃度が増加して雨滴が酸性化してしまいます。
酸性雨ってどのくらいのpHなのか
酸性雨は、一般的には大気中の二酸化炭素のみが純水に溶けた場合のpHが5.6であることから、pH5.6以下の降水を酸性雨とすることが多いようです。
理屈はわかったけど、本当に化石燃料の燃焼などで酸性雨を定義することができるのかというと難しい問題で、実は大気中には自然由来のものも含めて降水のpHに影響を与えるさまざまな物質があり、これらにより生じるイオンが雨滴中で相互作用することでpHが決まってくるので、判断が難しいのです。
酸性雨の影響と対策
酸性雨の影響は、例えばヨーロッパでは針葉樹林の50%以上に何等かの被害がみられたとされていて、深刻な森林衰退がみられるところもあるようです。
日本においても、関東・関西周辺や瀬戸内海沿岸などの大都市周辺や、北陸・山陰といった日本海沿岸地域で森林衰退がみられているようで、酸性雨が植物の葉に直接作用し、土壌を産生かすることによって影響がでているのではないかと言われています。
もちろん、森林の衰退は、オゾン層や大気汚染、キクイムシなどによる害、シカなどによる食害、気候変動などさまざまな要因が絡んでいます。
さらに酸性雨は、銅や大理石、コンクリートなども腐食させるので、文化財や建築物にも悪影響があると言われています。
欧州では、イオウ酸化物の排出量を削減することを定めたヘルシンキ議定書、窒素酸化物の排出量の水準を凍結することを定めたソフィア議定書、イオウ酸化物の国別削減目標量を規定したオスロ議定書などが締結されています。
東アジアにおいても、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)が組織されています。