人間は、普段何気なく行っている動作も、実に複雑な機能がからみあって成り立っていることがわかります。
例えば、人間は指1本ケガをして絆創膏を巻いていたとしても、そこには違和感があり、何かの動作をすると傷んだりして気になり、不快感を覚えたりするものです。
食べるということは人間の生命活動・生命維持において必要不可欠ですが、自力での食事が困難な人もいることを考えると、あらためて食べることの大変さというものを感じます。
食べる意義
なぜヒトは食べるのかというと、これを生物学的に考えれば、生命維持に必要なエネルギーを得るためという生理的意義が出てきます。
それ以外にも、ヒトとして食事は楽しみであったり、満足感が得られるといった心理的な意義、さらに食事をしながらの会話といった社会的意義もあります。
たかが食べることといっても、生理的意義を考えただけでも、生命維持、活動に必要なエネルギーの確保、疲労の回復や予防、免疫の教科や健康の維持・増進、生活リズムの調整などがあげられます。
食べるために必要な機能
食べるという動作は、普段私たちは何気なく無意識にやっていますが、脳や全身の筋肉の複雑な動きの連続によって成り立っている大変な動作なのです。
まずは脳でのいろいろな感覚刺激からの情報の統合、記憶、判断、洞察、想像、学習、感動などの高次な活動によって食べるという動作が成り立っています。
以前食べた食べものの味、見た目などから味を連想したり、これは美味しいかどうかの判断をしたりします。
食べ物が口に入ると、歯で食べ物を咀嚼し、舌と頬の協調運動により歯の上に食べ物を乗せて、顎を上下に動かして、食べ物を歯で粉砕し、唾液と混ぜ合わせ食塊を形成します。
さらに唾液により口腔内が適度に湿潤し、それにより食塊形成や食物移送がスムーズに行われ、口唇が正常に締まることで食べることが可能になりますし、舌の動きによって食塊を咽頭へ送りこむことができ、嚥下反射によって起こる一連の運動により、咽頭から食道を通って胃へ送られます。
嚥下時には、声門閉鎖が起こるとともに、嚥下時無呼吸となり、食塊が気道に入るのが防がれ、誤って入った場合でも、咳嗽反射によりむせて、食塊が気道外へ排出されるようなしくみになっています。
さらに、手で食物をつまんだりすくったりして、こぼさず口まで運ぶためには、脳による運動機能が必要不可欠です。
食べるための脳機能だけでもすごい
食べるための脳機能だけを考えてもすごいことです。
食材の触覚や嗅覚などで感覚を感じ、視覚で食べ物を認識するなど、五感を使って食材を感じます。
それを記憶と照合し認識することで、ああ自分の前にサラダがあるといった認識ができます。
そして頭頂連合野で情報が整理され、前頭連合野にその情報が送られ、判断が下されて、これは箸を使って食べるのがいいと判断を下し、箸を持ち、食べるといったプランが決定されるのです。