強い組織、大きな組織は、いかに愚かな集団となりやすいか | 薬剤師トピックス

世界をみてみると、あちこちで暴動などが起きています。

個人個人だと、正しい判断ができる人たちでも、集団となると間違った判断をしたり、間違った行動をとってしまったりすることがあります。

集団的浅慮が起きやすい環境

社会心理学には、『集団的浅慮(せんりょ)』という言葉があります。

『浅慮』とは、読んで字のごとく、思慮が浅い、浅はかな考えという意味になります。

つまり『集団的浅慮』とは、個人だと正しい判断ができる人が、集団で協議した結果、間違った判断を下してしまうようなことを言います。

これに関連して、米国の大統領選がもうすぐなので、米国政府に関連した話をしてみることにします。

米国の心理学者であるジャニスは、個人だと正しい判断をしていた人たちが、集団となることで間違った判断を下すようになることを『集団的浅慮(せんりょ)』(グループシンク)として提唱しました。

このジャニスは、米国政府をひとつの集団として、米国政府による過去の失敗と言われている歴史について調査をしています。

ベトナム戦争、朝鮮戦争、真珠湾攻撃、ビッグス湾事件、ウォーターゲート事件といったさまざまな、いわば見方によっては米国の黒歴史ともいえるようなことについて、さまざまな記録を調査し、大統領とそのアドバイザーたちが、どのような経緯で、誤った政策決定に走ったのかを分析し、集団的浅慮の兆候などを系統化してまとめています。

その結果、『集団的浅慮』は、メンバーの結束力が強くて、反対意見の出にくい閉鎖的な集団で発生しやすいという結論に達しています。

反対意見がでにくい、忖度、忖度の社会、まさに、考えが浅い馬鹿な判断をしやすい社会と言えるかもしれません。

日本でも、『新型コロナウイルス対策検証・戦略WT報告書』などが出され、過去に政府や官邸がどのようないきさつで、どのようなことを判断したかということが検証されていますが、とても良いことで、かつ大事なことだと思います。

集団的浅慮が起きる兆候

集団的浅慮が起こりやすい状態、起きる兆候というものがあります。
ジャニスは、この兆候について、次の3つのことをあげていまう。

1.自分たちは大丈夫という無根拠な過信
2.外部からの忠告の軽視
3.自分たちにとって不都合な情報や反対意見の遮断

自分たちは大丈夫だとう根拠がない自信や幻想、自分たちが決めたことは何が何でも最後までやり遂げるといった集団の価値観に対する過剰な信念、こういったものを持っているリーダーや集団は、臨機応変に状況をみながらの訂正ができず、誤った判断を下しやすい傾向があるのです。

また、強い組織や大きな組織、偉くなった人間ほど、外部の人間に対して、何もわかっていない素人が口出しをするなといわんばかりに、見下したり、忠告を軽視する傾向があります。

専門家の意見も聞かず、自分たちだけの低レベルな知識と浅はかな経験とプライドで判断すれば、道を間違えやすいのもうなずけます。

自分たちにとって都合の悪い情報を隠したり、あるいは問題をすり替えたり、異議を唱えたものに圧力をかけるというようなことをする組織は、もうその時点で、自分たちに自信がなかったり、物事をきちんと論理的に説明するだけの能力に欠けているのです。

集団的浅慮を起こしやすい組織では何が行われているのか

『集団的浅慮』が起きやすい組織は、周りでみていてもわかりやすいところがあります。
まずは、自分たちが正しいと思っているので、他の案がでてきても十分に検討すらしません。

目標も具体的ではなく、十分に検討されていないケースも多いでしょう。

手元にある情報から、都合のよいものだけを取り上げ、自分たちの都合のよいような解釈ばかりしだすと黄色信号です。

最新情報をチェックしよう!