

フレイルの予防・対策ということで、いろいろな体操が紹介されていますが、その中でも厳選して14個の体操とストレッチにしぼって紹介します。
筋力と機能、バランスといった観点から特選5選を、とっさの時の対応力ということで推奨5選を、柔軟性という点でストレッチ4選をピックアップしています。
特選5選に選んだ体操は、自立した生活を送るための「最低限のエンジンとブレーキ」を鍛えるものです。
特に、スクワットなどの機能的筋トレと、バランス運動の組み合わせは非常に有効であることが科学的にも証明されています。
その観点から5つを厳選してみました。
参考資料・根拠論文
Sherrington, C., et al. (2019). "Physical activity and exercise to prevent falls in older people." Cochrane Database of Systematic Reviews. Issue 1
地域で暮らす高齢者を対象に、1万人以上のデータを分析した最新のコクランレビューをしたものです。
バランス運動と機能的トレーニング(スクワットなど)を組み合わせた運動プログラムにより、転倒率が23%減少することが証明されています。
バランスと筋力の両方を鍛えることが、科学的に最も効果が高いことが示されています。
Buchner, D. M., & Cress, M. E. (1997). "Physical activity and the prevention of falls in older adults." Clinics in Geriatric Medicine. Vol. 13, No. 1
下肢の筋力やバランス能力が、どのように転倒リスクと結びついているかを分析した初期の重要論文として知られています。
筋力が一定のレベル(閾値)を下回ると急激に転倒リスクが高まります。

効果部位:太もも・お尻
目安:10回×2セット
やり方
椅子に浅めに座る(背もたれにもたれない)
足は肩幅に開き、つま先はやや外側
背筋を伸ばしたまま、前傾姿勢をとる
ゆっくり3秒かけて立ち上がる
ゆっくり3秒かけて座る(ドスンと座らない)
ポイント
膝がつま先より大きく前に出ない
立つときに「お尻を締める」意識
きつい場合は手を太ももに置いて補助OK
効果部位:脚全体・体幹
目安:左右30秒×2回
やり方
椅子や壁の横に立つ
片足を5~10cm持ち上げる
背筋を伸ばしたままキープ
ポイント
目線は正面
ぐらついたらすぐ支えを使う
歯磨き中に行うと習慣化しやすい
効果部位:ふくらはぎ(血流改善にも◎)
目安:15回×2セット
やり方
椅子や壁に手をついて立つ
ゆっくり2秒でかかとを上げる
つま先立ちで1秒キープ
ゆっくり3秒で下ろす
ポイント
反動を使わない
背筋を伸ばす
慣れてきたら片足で挑戦
効果部位:すね(前脛骨筋)
目安:10~15回×2セット
やり方(立位)
壁につかまって立つ
かかとは床につけたまま、つま先を持ち上げる
2秒キープ
ゆっくり戻す
※椅子に座って行ってもOK
ポイント
体を後ろに倒しすぎない
足指までしっかり上げる意識
効果部位:背中・腹筋深部
目安:5秒キープ×5回
やり方
椅子に浅く座る(足は肩幅)
骨盤を立てるイメージで背筋を伸ばす
頭を天井に引き上げるように5秒キープ
力を抜いてリラックス
ポイント
胸を張りすぎない
あごを引いて首を長く
呼吸は止めない
生活の範囲を広げ、「とっさの動き」や「持久力」をサポートするもの
転倒を防ぐには『筋力』だけでなく、脳が反射的に足を出す『回路』が大切ですが、以下に根拠論文としてあげた2017年の研究でも、こうした『とっさの一歩』を練習することで、転倒を約半分に減らせることが示されています。
「横歩き」や「もも上げ」は、こうした「とっさの動き」をスムーズに行うための「土台となる身体機能」と考えられるため、そういった視点で推奨5選を選んでいます。
参考資料・根拠論文
Effectiveness of Reactive Stepping Training on Falls in Community-Dwelling Older Adults: Systematic Review and Meta-analysis. Journal of the American Medical Directors Association ,2017, 18(10), p839.e1-e9
「リアクティブ・ステップ・トレーニング(RBT)」、つまり「予測できない事態に対して、とっさに足が出る能力」を鍛えるトレーニングの効果を検証した非常に重要なメタ分析の論文になっていて、「とっさのステップ」を練習することで、日常生活での転倒リスクが約50%減少することが示されています。

効果部位:太もも前・股関節
目安:左右10回×2セット
やり方(立位)
椅子の背に手を添える
片足の膝をゆっくり胸に近づける
1秒止める
ゆっくり下ろす
反対側も同様に
※座って行ってもOK
ポイント
上半身を反らしすぎない
ゆっくり動作が基本
安全に行うための注意点
※息を止めない(声を出しながら行うと◎)
※痛みが出たら中止
※食後すぐは避ける
※水分補給を忘れずに
継続のコツ
「テレビのCM中だけやる」
「朝起きたらスクワット5回だけ」
まずは少ない回数から始める
大切なのは「強度」よりも「継続」です。
無理なく、できる範囲で毎日の習慣にしていきましょう。
効果部位:お尻(中臀筋)・股関節
目安:10歩×2往復
やり方
壁に沿って立つ
軽く膝を曲げる
右足を横に一歩出す
左足をゆっくりそろえる
10歩進んだら反対方向へ
ポイント
足を交差させない
上半身を傾けない
ゆっくり丁寧に
効果部位:背中上部(菱形筋)
目安:10回×2セット
やり方
椅子に座る
両肘を曲げ、肩の高さに上げる
肩甲骨を背中で寄せるイメージで後ろに引く
3秒キープして戻す
ポイント
肩をすくめない
胸を自然に開く
ゆっくり丁寧に行う
効果部位:わき腹・背中
目安:左右10回
やり方
椅子に座る
両腕を胸の前で組む
背筋を伸ばしたまま、ゆっくり右へひねる
正面に戻る
左も同様に
ポイント
反動を使わない
痛みが出るほどひねらない
呼吸に合わせてゆっくり
効果部位:胸・腕・肩
目安:10回×2セット
やり方
壁から腕1本分離れて立つ
肩幅に手をつく
ゆっくり肘を曲げて体を壁に近づける
ゆっくり押し戻す
ポイント
体を一直線に保つ
腰を反らさない
きつい場合は壁に近づく
安全に行うための注意点
※息を止めない(「いち、に」と声を出すのも◎)
※肩に痛みがある場合は可動域を小さく
※水分補給を忘れない
※週3~5回が目安
継続のコツ
洗濯物を干す前に10回
テレビCM中に肩回し
「今日は1種目だけ」でもOK
上半身が安定すると、姿勢も良くなり、疲れにくい体になります。
無理なく、できる範囲で続けることがフレイル予防の第一歩です。
自立した生活を送るため「必要な筋肉」をストレッチする
特に高齢者では、柔軟性トレーニングが、日常生活動作(ADL)や生活の質の維持に大きく寄与しています。
「前屈」などのストレッチ動作が、歩行時のスムーズな重心移動に繋がります。
私たちの関節の柔らかさは、放っておくと年間1%ずつ、70歳までには最大30%も失われると言われています。
筋トレ・バランスに加えて、しっかりとストレッチをしていくことも重要です。
参考資料・根拠論文
Flexibility Training and Functional Ability in Older Adults: A Systematic Review. Journal of Aging Research, 2013, Vol. 2013, Article ID 706816, 8 pages
関節の可動域を広げることが「歩幅の維持」や「姿勢の改善」に寄与するということがまとめられています。

全身の背面ラインを一気にリセット
やり方
両脚を揃えて伸ばして座り、上体を前に倒します。
効く筋肉
ハムストリングス、大臀筋、広背筋(背中の広範囲)。
コツ・ポイント
膝を無理に伸ばしすぎず、少し緩めてもOKです。「太ももとお腹を近づける」ことを優先してください。
呼吸
深い深呼吸を5回ほど繰り返します。吐くたびに指先が少しずつ遠くへ伸びていく感覚を楽しみましょう。
※ハムストリングスの柔軟性は、歩幅を確保し、つまずきを防ぐために不可欠です。
左右のバランスを整え、腰痛を予防
やり方
片脚を伸ばし、もう片方の足の裏を太ももの内側に添えます。反対側の足を伸ばし、体が後ろに倒れないよう、両手を体の前につきます。
手で支えながら、ゆっくりと重心を斜め前、または伸ばしている脚とは反対方向へわずかに移動させ、太ももの内側が伸びるのを感じます。効く筋肉
内転筋、ハムストリングス、腓腹筋(ふくらはぎ)、腰方形筋(腰の横)。
コツ・ポイント
左右で硬さが違う場合は、硬い方を少し長めに行うことで全身のバランスが整います。
呼吸
吐く息に合わせて、上半身の力を完全に抜いて重力に任せます。
※左右の柔軟性差を解消することで、歩行時のふらつきを抑える効果が期待できます。
股関節の可動域を最大化する
やり方
両脚を無理のない範囲で左右に広げて座り、背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと上体を前に倒します。
効く筋肉
内転筋(太ももの内側)、ハムストリングス(裏側)。
コツ・ポイント
背中を丸めるのではなく、「骨盤から前に倒す」イメージで行うと効果的です。つま先は常に天井を向けておきましょう。
呼吸
息を吐きながら少しずつ深めます。痛気持ちいいところで止めて20〜30秒キープ。
※股関節の可動域を広くしておくと、バランスを崩した際に「とっさに足を横に出す」範囲が広がり、転倒を防ぐことができます。
レジェンドも愛用する「体の軸」調整
やり方
片脚を曲げて床につき、もう片方の脚をまたぐように交差させます。立てた膝に肘をかけ、息を吐きながらゆっくりと後ろを振り返るように上体をねじります。
効く筋肉
臀筋(お尻)、脊柱起立筋(背中)、腹斜筋。
コツ・ポイント
頭のてっぺんが天井から吊るされているような意識で、背骨を長く保ちながらねじります。お尻が床から浮かないように注意。
呼吸
吸う息で背筋を伸ばし、吐く息でさらに数ミリねじるイメージを繰り返すと、深層部までほぐれます。
※振り返る動作や歩行時の腕振りに影響して、QOL(生活の質)を高めてくれます。