
熱中症リスクと「不快指数」と「暑さ指数(WBGT)」の計算方法
暑さといえば、天気予報で夏日、真夏日、猛暑日などの言葉がでてきて、「気温」がクローズアップされますが、同じ気温が30℃でも、カラッとした日とジメジメした日があり、体感の暑さがまったく違い、不快感も変わってきます。

| 不快指数 & 暑さ指数 計算ツール |
気温と湿度から、『不快指数(DI)』と室内での『暑さ指数(WBGT)』を計算判定できます。
本来なら、『暑さ指数(WBGT)』は、湿球温度・黒球温度・乾球温度がわからないと算出できませんが、
膨大な気象データをもとに「経験式(非線形回帰モデル)」から割り出した気象学などでよく使われる「Stullの公式」という非常に高度な数式があり、それにより気温と湿度から算出しています。
『気温』とは別に、この「人間の体感」を科学的に表すために、『不快指数』と『暑さ指数(WBGT)』という2つの指標が使われていて、最近の天気予報でもこれらの数値を目にすることも増えてきています。
暑さといえば、
『不快指数』と『暑さ指数(WBGT)』という2つの指標ですが、「目的」も「計算方法」もまったく異なったものになっています。
私たちヒトの体には、「体温調節機能」が備わっています。
ヒトは体温が上がると、汗をかき、その汗が皮膚から蒸発するときに、周囲の熱を奪っていく、つまり『気化熱』によって体温を一定に保っています。
しかし、空気中の湿度が高いと、汗が空気中に蒸発しにくくなり、熱が体の中にこもってしまうため、「湿度」が高いと「気温」はそこまで高くないのに、ものすごく暑く感じるようになり、また『熱中症』のリスクも高まってしまいます。
夏の暑さを正しく評価するには、『気温』の他に、『湿度』、それに加えて周囲からの熱である『輻射熱』などを考慮して考える必要があるのです。
『不快指数(DI:Discomfort Index)』は、名前どおり「人間がその気候をどれくらい不快に感じるか」を数値化したもので、1959年にアメリカで考案されました。
『不快指数(DI:Discomfort Index)』は、「気温」と「湿度」がわかれば、式によって計算することができます。
不快指数(DI :℃)=0.81 × T + 0.01 × U × (0.99 × T - 14.3)+ 46.3
T:気温(℃)
U:湿度(%)
例えば、
気温 28℃、湿度 80%の場合は、
0.81 × 28 + 0.01 × 85 × (0.99 × 28 - 14.3)+ 46.3 = 80.387 となるので、不快指数は80.4(℃)となります。
気温 28℃、湿度 40%の場合は、
0.81 × 28 + 0.01 × 40 × (0.99 × 28 - 14.3)+ 46.3 =74.348 となるので、不快指数は74.3(℃)となります。
不快指数とヒトの体感の関係は次のようになっています。
不快指数
55(℃)未満 : 寒い
55~60(℃) : 肌寒い
60~65(℃) : 何も感じない(快適)
65~70(℃) : 快い
70~75(℃) : 暑くない
75~80(℃) : やや暑い(汗をかき始める)
80~85(℃) : 暑くて不快(全体の半数以上が不快に感じる)
85(℃)以上 : 全員が不快に感じる(我慢できない暑さ)
同じ気温28℃でも、湿度80%の場合は、不快指数は80.4(℃)となり、全体の半数以上が不快に感じますが、湿度40%の場合は、不快指数74.3(℃)となり体感的には暑くないという結果になることからも、ヒトの体感は、気温はもとより、湿度の差による影響もかなり受けることがわかると思います。
『暑さ指数(WBGT)』は、湿球黒球温度(Wet-Bulb Globe Temperature)のことで、その頭文字を取ってWBGTと呼ばれたりもします。
『暑さ指数(WBGT)』は、熱中症を予防するために1954年にアメリカの海兵隊新兵訓練所で提案されたものです。
今では、学校の部活動やスポーツ現場、建設現場などで熱中症予防の指標として活躍している指標になります。
不快指数も暑さ指数も、アメリカ生まれというわけです。
『不快指数』を算出するのには、「気温」と「湿度」の2つが必要でしたが、『暑さ指数(WBGT)』の算出では、「気温」と「湿度」に加え「日射・輻射熱」も考慮されています。
『日射・輻射熱』とは、地面や建物、太陽から伝わってくるジリジリした熱になります。
『暑さ指数(WBGT)』の計算式は、厳密にいうと屋外の場合と屋内の場合では異なっています。
屋外の暑さ指数(WBGT:℃)=0.7 × Tw + 0.2 × Tg + 0.1 × Td
屋内の暑さ指数(WBGT:℃)=0.7 × Tw + 0.3 × Tg
Tw:湿球温度(℃)
Tg:黒球温度(℃)
Td:乾球温度(℃)
屋外での暑さ指数の算出式を見てみると、湿度に関連した湿球温度、輻射熱に関連した黒球温度、気温に関連した乾球温度の影響力が、7:2:1になっていることがわかり、ヒトの体がリアルタイムで受けている「熱のストレス」を正確に弾き出していくと、湿度の占める割合が大きいことがわかります。
暑さ指数(WBGT)と熱中症リスクの体感の関係は日常生活や運動の指針が環境省から発表されています。
31℃以上 : 危険! 外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。運動は原則中止。
28℃~31℃未満 : 厳重警戒! 外出時は炎天下を避け、室内ではエアコンを適切に使う。激しい運動は中止。
25℃~28℃未満 : 警戒! 運動や激しい作業の際は、定期的に十分に休息を取り、水分・塩分を補給する。
25℃未満 : 注意! 熱中症の危険は比較的低いが、激しい運動や重労働の際は水分補給を忘れない。
※日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)より改編
ちなみに、ニュースで「熱中症警戒アラート」が発表されるのは、『暑さ指数(WBGT)』が33℃以上になると予測されたときです。
『暑さ指数(WBGT)』の計算に出てきた3つの温度「湿球温度」「黒球温度」「乾球温度」を測る温度計について、科学的に解説していきます。
湿球温度計は、湿度の影響を含んだ「涼しさの限界」を測る温度計です。
温度計の球部つまりセンサー部を水で湿らせたガーゼで包んだものになります。
球部を水で湿らせたガーゼで包むことにより、水が蒸発するときに熱を奪ういわゆる『気化熱』により、普通の気温よりも低い温度になります。
空気が乾燥していれば、水がどんどん蒸発していくため、気化熱がどんどん奪われ、湿球温度計の温度は大きく下がります。
一方、空気が湿ってジメジメしていれば、水がほとんど蒸発しないため、湿球温度計の温度はあまり下がりません。
湿球温度計は、度の影響を含んだ「涼しさの限界」を測る温度計と述べましたが、言い方を換えれば、人間が汗をかいたときの皮膚の表面温度の再現をしたものになります。
従ってこの温度が高いということは、汗をかいても全く体温が下がらない熱中症のリスクが高い環境と言えるのです。
黒球温度計は、『輻射熱』つまり太陽の直射日光や、地面からの照り返しを測る温度計です。
直径15cmほどの中が空洞になった銅製の球の表面を、光を反射しにくいつや消しの黒色に塗装し、その中心に温度センサーを入れた仕組みになっています。
周りの塗装された黒色の部分が光や熱をよく吸収するので、直射日光が当たる場所では、この黒球の内部の温度は周囲の気温よりもはるかに高くなります。
これは何を意味しているのかというと、ヒトが太陽の下に立った時に、服や肌がうけるジリジリした熱放射をそのまま反映した形になっています。
乾球温度計は、通常の温度計です。
センサー部分が乾いた状態のままで、つまり普通の一般にいう気温の測定になります。
『暑さ指数(WBGT)』の計算式から、Tw:湿球温度(℃)、Tg:黒球温度(℃)、Td:乾球温度(℃)の3つの温度がわからないと算出できません。
ところが、気温と湿度から『暑さ指数(WBGT)』を割り出すプログラムがあったりします。
これは、気象学などでよく使われる「Stullの公式」という膨大な気象データをもとに「経験式(非線形回帰モデル)」を作成した高度な数式を使っています。
従って、気温と湿度さえ分かれば、そこから逆算して「湿球温度」をかなり正確に割り出すことができるようになっているのです。
「経験式(非線形回帰モデル)」という難しそうな言葉がでてきましたが、「経験式」とは、実験データから無理やり作った公式で、「数多くのデータを実験して集め、そのデータにぴったり合う都合の良い数式を後からこじつけて作られた関係式になります。
非線形回帰モデルの非線形とは「グラフに描いたとき、まっすぐな直線つまり比例にならない」という意味で、気温や湿度が上がると、湿球温度は「最初は急に上がるけど、途中からなだらかになる」といった、ぐにゃぐにゃに曲がったグラフになるという関係を示しています。
回帰モデルとは、「バラバラなデータの真ん中を通る、いちばん都合の良い線を引かれた線を数式で表したもの」になります。
「黒球温度」については、屋内で日射なし、風速0.1m/sであれば、『黒球温度 ≒ 気温』 とみなすことができます。
日差しの当たらない屋内であれば、黒球温度は普通の気温(乾球温度)とほぼ同じになります。
屋外の場合は、風の強さや、直射日光の強さ(輻射熱)によって黒球温度が気温より大幅に高くなるので、湿度と気温だけで算出することは難しくなります。
『暑さ指数』を計算するときに使われる『湿球温度計(Tw)』は、温度計の球部つまりセンサー部を水で湿らせたガーゼで包んだものになり、測定結果は℃ででてきます。
一方、『不快指数』を計算するときに使われる湿度は、湿度計で測定されたもので%で出てきます。
いったいどう違うのでしょうか?
『湿度計』で測定される湿度は、『相対湿度』と呼ばれるものです。
空気は、気温があがればより多くの水蒸気を蓄えることができるコップに喩えることができます。
そしてこの限界量がいわゆる『飽和水蒸気量』です。
湿度100%は、このコップが満タンの状態であり、湿度50%といえば、コップ半分ということになります。
つまり、湿度計で示された湿度は、空気の湿り具合をそのままダイレクトに示した数値になります。
『湿球温度計(Tw)』は、単位は%ではなく温度(℃)で、が蒸発するときの「気化熱」で冷やされた温度計自体の温度を示しています。
『湿度計』の湿度は(%)、『湿球温度計(Tw)』の温度は(℃)と単位からして違いますが、湿球温度計の温度(℃)がどこまで下がるかは、湿度計の湿度(%)によって決まります。
つまりこの両者には相関関係があります。
学校の理科の授業で、普通の温度計(乾球)と、濡れたガーゼを巻いた温度計(湿球)が2本並んで『乾湿計(乾湿温度計)』を見たことがある人もいるかと思います。
使い方は、まずは乾球温度計(普通の温度計)の目盛りを読み気温を測定します。
次に湿球温度計(濡れたガーゼが巻かれた温度計)の目盛りを読み、その差を計算します。
そして換算表を使って、湿度を導き出します。
最近では、昔ながらの温度計などを使わず、センサーを使って温度や湿度が測定されます。
家電などに内蔵されたセンサーも、「サーミスタ(Thermistor)」という電子部品が入っています。
温度センサーには、温度が変わると電気抵抗つまり電気の通りにくさが激変する半導体が使われています。
センサーには一定の電圧をかけて電気が流れるような状態にしておき、周囲の温度があがると電気抵抗が下がり電気がよく流れるようになり、IC(集積回路)がこれをキャッチして液晶画面にデジタル表示するという仕組みになっています。

湿度センサーのほうは、水蒸気は電気をものすごく蓄えやすいという性質を利用して、2枚の金属の電極板の間に高分子ポリマーの膜を挟んだコンデンサのしくみを応用しています。
湿度があがると、電極に挟まれた高分子ポリマーが空気中の水蒸気を吸い込むことで、コンデンサに蓄えられる電気量が急激にアップします。
最近では、小型化できる、電子データとして記録できる、壊れにくいといったことから、従来の温度計や湿度計に変わり、デジタル式の温度センサー、湿度センサーが多く使われるようになってきています。