
梅毒の検査には、梅毒の血清反応が行われますが、大きく分けると、脂質抗体であるカルジオリピン抗原を用いるSTS (serologic test for syphilis)と、梅毒病原体であるTP (Treponema pallidum) 抗原を用いる2つの検査法があります。
カルジオリピンとは、ウシ心臓から抽出されたリン脂質のことです。
STSには、ガラス板法(沈降反応)とRPR(凝集反応)の検査がありますが、一般的にはガラス板法ではなく自動測定法が多数開発されているRPR法が用いられています。
このRPR法での測定は、生物学的偽陽性が多くあることで知られています。生物学的偽陽性(BFP)とは、梅毒に感染していなくても陽性となるケースがあるということです。
一方TP抗原法は、TP菌体成分を吸着した赤血球またはゼラチン粒子を用いる方法、TPHA菌体成分を吸着したラテックス粒子を用いる方法(TPHA法)、ラテックス凝集法の菌体及び非病原性トレポネーマ抗体を吸収した検体を用いる方法、さらに感度をあげた間接蛍光抗体法であるFTA-ARS等があります。
TP抗原法は梅毒に対する特異性が高いので、梅毒感染の確認には非常に有用ですが、感染初期では、STSよりも陽性化となるのに時間がかかるといった欠点あります。
したがって、梅毒の試験では、STS法とTP法が組み合わせて行われることが多くなっています。
●STS法(-) TPHA法(-)
梅毒感染なし
ただし、梅毒感染直後はSTSでも検出できず。
思い当たるふしがある場合は、念のため数週間後に再検査
●STS法(+) TPHA法(+)
梅毒診断
ただし、非常にまれにTPHAで非特異的反応を示す場合があるので、FTA-ABSで確認
●STS法(+) TPHA法(-)
梅毒感染初期の可能性が高いので、数週間後に再検査し、TPHA又はFTA-ABSで確認
梅毒以外の感染症(最近・ウイルス感染)、予防接種、膠原病など
STS法であるRPR法は、梅毒スピロヘータそのものを見ているわけではないので、梅毒以外のスピロヘータにも反応します。
ヒトでは口の中の歯槽膿漏の原因となるスピロヘータが存在しますが、これが反応し陽性となることもあります。
●STS法(-) TPHA法(+)
治療後の梅毒は、治療後STSは陰性化するもTPHAは長期間残る
この場合はFTA-ABSで確認
また、梅毒感染後治療しなくても、長期経過するとSTSが陰性となるケースがあります。