次亜塩素酸の種類

次亜塩素酸の種類

新型コロナ・インフルエンザやノロウイルスの消毒に有効とされる次亜塩素酸ですが、いろいろな種類が市販されています。次亜塩素酸の種類とそれぞれの特徴・違いについてまとめてみました。

次亜塩素酸水

新型コロナウイルスで消毒用エタノールが不足しがちになってきますが、消毒用エタノールに代わるものとして、『次亜塩素酸水』が注目を集めています。

 

次亜塩素酸水は、本来は消毒剤としての承認はなく、食品添加物として使用されています。

 

『新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会の発表資料』も出されています。

 

 https://www.nite.go.jp/data/000108034.pdf

 

なお、主要な消毒剤については、健栄製薬の『消毒剤マニュアル』に詳しく記載されています。

 

 https://www.kenei-pharm.com/cms/wp-content/uploads/2016/11/shoudokukannrenn_03.pdf

次亜塩素酸水の抗菌・抗ウイルス作用

次亜塩素酸水の抗菌・抗ウイルス作用は、次亜塩素酸による酸化作用によるところが大きくなっています。

 

次亜塩素酸

 

次亜塩素酸(HClO)は、タンパク質や酵素、糖、脂質といった有機物に触れると、そのものから2個の電子(2e)を奪い、酸化させます。
C=C、C=N、C-N、-NH、-SHなど、電子密度が高い結合部位を選択的に攻撃して、2個の電子(2e)を奪います。

 

次亜塩素酸

 

次亜塩素酸(HClO)は、病原微生物の細胞壁及び形質膜を酸化攻撃するとともに、細胞の中に入り、病原微生物の細胞の中にあるタンパク質や酵素も攻撃します。
一方、次亜塩素酸イオン(OCl)は、病原微生物の細胞壁を酸化攻撃しますが、形質膜を通過できません

 

したがって、次亜塩素酸イオン(OCl)は、次亜塩素酸(HClO)よりも抗菌・抗ウイルス力が弱くなります。

 

次亜塩素酸水の種類

次亜塩素酸水は、pHによって分類されています。
次亜塩素酸

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次亜塩素酸水

 

次亜塩素酸水の素

 

電解次亜水

 

次亜塩素酸ナトリウム

 

 

強酸性電解水

 

弱酸性電解水

 

微酸性電解水

 

ジクロロイソシアヌル酸Na

 

弱アルカリ電解水(電解次亜水)

 

次亜塩素酸ナトリウム

 

生成法

 

電気分解法で水と塩水を電気分解して生成(食品添加物として利用)

0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を、隔膜がある電解槽(二室型または三室型)で電気分解し、陽極側から生成

 

電気分解法で水と塩水を電気分解して生成(食品添加物として利用)

0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を、隔膜がある電解槽(二室型または三室型)で電気分解し、陽極側から生成

次亜塩素酸ナトリウム+塩酸中和

 

電気分解法で水と塩水を電気分解して生成(食品添加物として利用)

塩酸または塩酸に塩化ナトリウム水溶液を加えた水溶液を、隔膜がない電解槽(一室型)で電気分解して生成

次亜塩素酸ナトリウム+塩酸中和

次亜塩素酸ナトリウム+炭酸中和

 

ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かすことで生成

 

電気分解法で水と塩水を電気分解して生成(食品添加物として利用)により生成

無隔膜電解(食塩)

 

一般に水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを吸収させて製造したのものが市販

 

pH

 

2.7以下

 

2.7~5

 

5~6.5

 

6.5~7

塩素濃度約60%

水に溶かすとpHが下がる

 

~7.53

 

12~

(強アルカリ)

 

殺菌力

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

芽胞菌は45ppm以上で有効。

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

 

細菌・ウイルス・真菌、マウスノロウイルスに有効。

 

               安定性

 

不安定。

使用場所での調整が原則。

 

不安定。

使用場所での調整が原則。

 

次亜塩素酸を98%含有して、化学的に安定。

遮光容器で1年以上保存が可能。

 

個体なので、随時調整して使用が理想。

水に溶かすことで加水分解をして、次亜塩素酸とイソシアヌル酸ナトリウムができる。

 

酸性電解水と比べて安定性はやや高く、殺菌力はやや劣る。

 

安定。

次亜塩素酸水より殺菌力は劣る。

 

有効塩素濃度

 

20~60ppm

 

10~60ppm

 

10~80ppm

 

10~200ppm

 

30~200ppm

 

100~200ppm以上

 

人体への危険性

 

塩素ガス発生に注意。

使用時の発生に対して換気などの対策も必要。

手指の消毒にも

手指消毒、内視鏡洗浄に用いられる。

目・粘膜につかないよう要注意。

 

pH3.5以下は、塩素ガスの発生に注意。

手指の消毒にも

目・粘膜につかないよう要注意。

 

ほとんどない。

手指の消毒にも最適

目などの粘膜についた場合は、速やかに洗い流す。

 

ほとんどない。

手指の消毒にも最適

目などの粘膜についた場合は、速やかに洗い流す。

 

ほとんどない。

手指の消毒にも

目などの粘膜についた場合は、速やかに洗い流す。

 

人体には使用禁止。

刺激性があり、酸性のものと混ざると有毒ガス発生。

 

金属などへの影響

 

塩素ガスが発生しやすい。

乾燥によって塩が濃縮されることで腐食しやすい。

 

微量の塩素ガスを発生しやすい。

乾燥によって塩が濃縮されることで腐食しやすい。

 

ステンレス材料に影響は小さい。

真鍮はやや変色。

アルミニウムは白色斑点発生。

鉄は水道水より若干錆びやすい。

 

金属腐食性は弱いが、鉄、亜鉛、ブリキなどの金属器具を腐食させることがあるので、プラスチック製の容器等で調製することが望ましい。

 

ステンレス材料に影響は小さい。

鉄などは錆びる可能性あり。

 

金属腐食性