人間は、悪臭を嗅げば不快に感じ、好きな香りを嗅げばリラックスできます。
しかし、香りは、食べ物に好き嫌いがあるのと同じでそれぞれ個々の主観があり、ある人にとっては好きな香りであっても、ある人にとっては不快な香りという場合もあります。
また香り成分は、その濃度によっても不快に感じたり、リラックスできる香りに感じたりします。
悪臭とストレス
人間は、悪臭を嗅いだときには、交感神経系の働きによってストレスを感じますが、このストレス反応は、臭いの不快感に応じて高まることが明らかにされています。
実際に、悪臭を嗅ぐとストレス応答マーカーと言われている唾液中のα-アミラーゼの分泌量が増えます。
ニオイの感じ方は主観によるところも多いため、同じニオイを、ある人はいい匂いと感じ、ある人は不快と感じることもあります。
代表的な例が、香水をたっぷりにつけた女性が近くに来た時、あまりにもその香りがどぎついのでつい距離を置いたという経験がある人もいると思います。
しかし、香水をすけている本人は、それが良いニオイだと思ってつけているわけですので、これも同じニオイなのに人によって感じ方が違う代表的な例だと思います。
最近では、「スメルハラスメント」という言葉もあり、体臭や悪臭は、人間関係のトラブルにまで発展しかねません。
さらに強い香りを放つ製品で生じる健康被害のことを指す『香害』などという造語も生まれています。
自分では、よかれとおもっている香りが、周りの人のひんしゅくをかっているというケースもあるかもしれません。
香りの感じ方は心理的な面の影響も大きい
ある実験によると、足裏のニオイを嗅がせたときは、不快に感じストレスが増強することがわかっています。
これとは逆に、バニラの香りを嗅がせたときは、快く感じストレスを受けないことがわかっています。
この人に、それではと足裏のニオイとバニラの香りを混ぜて嗅がせたら、不快ではないということでストレを受けませんでした。
このようにニオイも他のニオイと一緒にまざることで、それから受ける不快度やストレスを受けるか受けないかが違ってきます。
またニンニクをそのまま嗅がせた場合は、少し不快であったものの、ストレスを感じるほどではなかった人が、同じニンニクを「口臭成分」という不快ラベルを貼ってかがせたら、不快度がアップして、ストレスが増加したという研究報告もあります。
最近では、体臭はもちろんのこと、消臭除菌スプレーや制汗剤、芳香剤などには、におい成分が含まれるものも多くありますが、これらにおい成分が含まれているものすべてが『香害』の対象となりえます。
特にそのなかで問題となりやすいのが「洗濯物の香り」である柔軟剤で、香りやニオイの主観の違いの問題にとどまらず、体調不良を起こす人も続出してきています。
所詮は化学物質なので、化学物質がもたらしている公害ともいえるべきものです。
例えば、甘いものが好きな人は多いと思いますが、甘さにも限度があって、あまり甘すぎるとまずく感じたり、しつこく感じたりするものです。
世間一般的に良い香りだと言われている香りでも、濃度によって快適に感じたり不快に感じたりすることもありますし、その濃度の閾値も人によって違ったりします。
少し香りの強いものは特に、気をつけたほうが良いのかもしれません。