夏の風物詩、蝉(セミ)も漢方薬になる | 健康トピックス

夏の風物詩と言えば、蝉時雨(せみしぐれ)、夏の季語でもあり、昔から好んで俳句に歌われたり、いろいろな曲の歌詞やタイトルにもなってきました。

その蝉時雨の主人公といえば、蝉ですが、この蝉は地上に出てきて、懸命に鳴き続けます。

あの小さな体のどこからこんな音がでるのかと思うくらい大きい音を出し続ける蝉は、とてもエネルギッシュと言えるかもしれません。

漢方薬の生薬に使われていた蝉の抜け殻

俳句の世界では、空蝉(うつせみ)というのも晩夏の季語になっていますが、いわゆる「蝉の抜け殻」というやつです。

実はこの蝉の抜け殻は、漢方薬の生薬として利用されているのです。

蝉の抜け殻の生薬名は、蝉退(センタイ)という名前になっています。
蝉殻(センカク)、蝉脱(センダツ)、蝉衣(センイ)という別名もありますが、通常は『蝉退』が用いられます。

ラテン名は Cicadae Periostracum、英名は Cicada Slough です。

意外と処方される漢方薬にも蝉の抜け殻が入っていた

実は、この『蝉退』が配合されている漢方処方の中には、意外と身近に処方されているものもあります。

湿疹やじんましんなどに比較的多く処方される『消風散(ショウフウサン)』という漢方処方には、『蝉退』が使われています。

ちなみに、『消風散』の効能は、「体力中等度以上の人の皮膚疾患で、かゆみが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの次の諸症:湿疹・皮膚炎、じんましん、水虫、あせも」です。

配合されている生薬は、「当帰、知母、地黄、胡麻、石膏、蝉退、防風、苦参、蒼朮、荊芥、木通、甘草、牛蒡子」と、バッチリ『蝉退』が配合されているのです。

蝉退という生薬

『蝉退』は、スジアカクマゼミという蝉の幼虫の抜け殻が主に使われています。

その成分や効果が気になるところですが、成分は、主にキチン質で、風邪などの発熱や悪寒、じんましんなどの皮膚のかゆみ、咽喉炎や結膜炎などの炎症に用いられます。

漢方生薬としての作用は、解表(体表に侵襲した邪気を取り除く働き)、透疹解毒(発疹させることで毒を取り除く中国漢方の治療法)、止痒(かゆみ止め)といった作用があります。

また破傷風などの痙攣発作の鎮静に対しても臨床研究が進められています。

麻疹の透疹解毒には、葛根・牛蒡子・薄荷といった生薬と併用して治療します。

また湿疹や皮膚の痒みに体位手は、荊芥や防風といった生薬と併用して用いられますが、まさにそうした処方の代表例が、前述の『消風散』になります。

炎症性の目の充血などには、菊花などとともに用いられます。

さらに化膿症や中耳炎に対しては、粉末にして塗布して用いられる場合もあるようです。

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