まさか、自分で自分の歯を溶かすわけないじゃないかと思うかもしれません。
もちろん、通常はそんなことはありません。しかしある状態のときは、本当にそういったことが起こりうるのです。
種明かしをしてしまえば、それは歯が生え変わる時です。
なぜ乳歯から永久歯に生え変わるのか
人間は身体の成長に伴って、6歳頃から12歳頃にかけて、歯が生え変わります。
乳歯から永久歯に生え変わるのですが、なぜそんな生え変わるなんて面倒なことをするのでしょうか。
歯は生後6カ月ごろから生えはじめてきますが、これはもちろん乳歯です。
乳歯は上下20本あります。
これに対して、乳歯の後に生えてくる永久歯は、全部で28本、親知らずを入れると32本になります。
生後まもなくはアゴの骨が小さく、乳歯で問題ないのですが、身体が成長するにつれアゴが発達してきます。
すると20本の乳歯だけではアゴの成長に追いつけなくなってしまいます。
そこで永久歯と生え変わるのです。
スタンバイした永久歯が乳歯と交代
永久歯は、乳歯の歯茎の下で成長していきます。
そしてやがて、乳歯の歯根に入り、乳歯の歯根を溶かす細胞が現れるため、永久歯の上にある乳歯の根が少しずつ溶かされていきます。
やがて、歯根の多くを失った乳歯は、歯茎に留まることができずに抜け落ち、そこから永久歯が新たに生えてくるのです。
乳歯が抜けるとき、最初はグラグラしてくるのは、歯根を失い安定できなくなった乳歯が抜ける準備をしているといってよいでしょう。
それじゃ、永久歯はいつごろできるのかというと、結構早い時期に作られているのです。
乳歯のもととなる歯胚は妊娠7~10週目に作られますが、永久歯の中で最もはえてくる歯になると妊娠3~5カ月ごろに歯胚ができてきています。
これが時間をかけて成長して、生え変わりはじめる6歳頃にはアゴの中で生える準備に入っているのです。
何回も歯が生え変わる動物がいる
人間の場合は、歯は乳歯から永久歯に生え変わる時、つまり一生に一度だけしか生え変わりませんが、動物の中には、一生に何度か歯が生え変わる動物もいます。
逆に、一度も生え変わらない動物もいます。
爬虫類やサメまどでは、歯は何度も生え変わります。歯根がないため抜けやすく、そのため何度も生え変わるようです。
獲物を捕るときに歯が抜けてありませんなんてことがないように、抜けたら生えるようになっているのです。
逆にネズミをはじめとしたげっ歯目やイルカは一度も生え変わらないことで知られています。
ネズミなどは敵から襲われたとき、歯がないと反撃できないので、硬いものでもかじれる一生ものの丈夫な歯を持っているのです。
ゾウは、一生のうちに6回歯が生え変わりますが、使っていた歯がすり減ると、後ろの歯がすり減って分だけ古い歯を押し出して生まれ変わります。
木でも食べてしまうゾウですが、歯がすり減った分だけ伸びてくるようになっています。