皮膚充填剤(フィラー)は、生物学的に安全性が証明されたものを皮下に注入することで、顔の構造を作ったり、陥凹部分やシワを補正したりするのに使われ、美容外科の領域で好んで使用されます。
ヒアルロン酸は、健常人の皮膚に多量に存在している生理活性物質で、皮膚の陥凹部分に注入することで、肌にハリを持たせ、若さを演出できます。
もともと生体成分なので安心して使え、アレルギーの心配も少なく、シワのミゾを埋めたり肌にふっくらしたボリュームを与えたりするのに使われるだけでなく、グミみたいな硬さで立体感を作りやすいタイプのものは、鼻すじや鼻先、あご先などに入れて顔立ちを変える手技にも使われます。
さらにちょっと注入しすぎてしまった場合でも、ヒアルロニダーゼを使うことで簡単に元に戻すことができます。
皮膚に長く留まれないヒアルロン酸
皮膚に存在しているヒアルロン酸は、低分子のため長くは皮膚に留まれません。
そこでヒアルロン酸フィラー(ヒアルロン酸充填治療:ヒアルロン酸注入療法)として用いられるヒアルロン酸は、分子を化学的に架橋することで、皮膚への停滞を2ヶ月〜半年程度まで留めることができるようになっています。
したがって通常は、注入したヒアルロン酸は数ヶ月~数年で吸収されてなくなるといわれています。
一般的には、皮膚の深いところより浅いところに注入したほうが長く持続し、また多く注入したほうが長く持続して残ります。
長い間持続して残っているヒアルロン酸は、薄いコラーゲンの被膜ができて、吸収されるのが押さえられるため、半永久的に残る可能性もあります。
残ってしまっても、通常は特に問題はありません。
ヒアルロン酸製剤の開発
ヒアルロン酸というと以前は牛から抽出したコラーゲンを使用したりしていましたが、狂牛病などの問題もあり、年々開発が進められてきました、
厚生労働省は、ヒアルロン酸製剤として、「ジュビダームビスタ ウルトラ XCJ」と「ジュビダームビスタ ウルトラプラス XCJ」を認めていて、ヒアルロン酸注入フィラー療法が広く日本で認知される美容外科の手技となっていきます。
コスメで使われるヒアルロン酸
まずは化粧品にはヒアロロン酸は保湿成分として配合されたりします。
ヒアルロン酸はグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンが交互に繰り返しているような分子構造をしていますが、その分子量の大きさを考えると、角質までで、それよりも奥の皮膚の真皮の方までは浸透していきません。
しかし、化粧品はもともと作用点が角質であるので、真皮まで浸透していかないことは全然問題ないでしょう。
ヒアルロン酸は、高い保水力を持った成分なので、角質を潤し、肌にうるおいを与えてくれます。また高い保水性があるので、感触としてもスベスベ感がでてきます。
もっともコスメの分野では、ヒアルロン酸は保湿成分として用いられますが、高分子ポリマのほうがよく使われています。
化粧品としてヒアルロン酸を使うときは、紫外線や酸化によってヒアルロン酸は分解されていってしまいますので、併せて紫外線対策をすると良いでしょう。