お灸は、身体に温熱刺激を加えることによって、ホメオスタシス(恒常性維持機能)の反応を導き出して、病気を治療したり予防してりしていく方法です。
『鍼灸(しんきゅう)』の中で、鍼治療は、鍼による機械的な刺激を与えるのに対し、灸治療はもぐさによる温熱的刺激を与えて治療していきます。
お灸はなぜもぐさなのか
お灸といえば、『もぐさ』です。
最近ではニンニクを用いたお灸などもありますが、基本のベースはもぐさで、もぐさの中にニンニクの成分を入れた形になっています。
お灸に使うもぐさは、ヨモギの葉から作られます。
ヨモギといえば、春になると道端や河原、アスファルトの隙間などから芽を出す生命力に優れた草で、草餅やよもぎ団子を連想する人もいると思いますが、まさにそのヨモギです。
ヨモギには、ヨーロッパでもハーブの母とも呼ばれるほどポピュラーなもので殺菌・消炎・保湿作用に優れていて、止血剤としても用いられてきました。
漢方でもヨモギの乾燥したものは、艾葉(がいよう)という生薬として、身体を温め、腹痛や胸やけ、下痢・便秘などの症状に用いられます。
ヨモギは風に吹かれ葉が裏返ると白く見えますが、これは葉の裏側をびっしりと毛茸(もうじょう)と腺毛(せんもう)が覆っているからです。
お灸に使えるようにするまでには、ヨモギを梅雨が終りに花の咲く前に刈り取って乾燥し、臼でくだいて葉や茎を取り去る作業を何度もくり返すことで、ほんの少しのフカフカの毛だけが残ります。
これがお灸に使うもぐさなるのですが、実は乾燥したヨモギから1/200しかとれない貴重なものなのです。
そこまでして、なぜヨモギをお灸にして使うのかというと、身体への作用や燃焼速度・温度、加工のしやすさ、原料調達などの面でヨモギが最適な素材だったからです。
お灸の香りの正体
お灸は、その独特の香りから、すぐにお灸をしているということがわかるくらいです。
この独特の香りは、ヨモギの腺毛に含まれているチネオールという精油成分による香りなのです。
お灸の効果と2つのタイプのお灸
お灸の効果には、止血作用、増血作用、免疫作用があると言われています。
止血作用は、お灸により血小板の働きを良くして、止血作用の促進が促されます。
実際にお灸により血液凝固時間の短縮作用が認められています。
増血作用は、お灸により赤血球や血色素量などの血液像に変化が見られ、赤血球を増やし血流を良くする働きがあります。
免疫作用としては、お灸は新機能を亢進させ、血管の収縮力を増強させる効果が認められています。
お灸といえば、お灸をすえるという言葉を連想する人、またせんねん灸みたいな市販されている台座がついたお灸を連想する人もいると思います。
お灸をすえる場合、有痕灸(ゆうこんきゅう)といって、直接体にもぐさを置いて着火する直接灸になります。
有痕灸に使われるもぐさは、着火しても60℃ぐらいにしか温度があがらない純度が高いもぐさが使われます。
せんねん灸のような台座などのうえにもぐさを置いて、直接肌の上でもぐさを燃焼させない方法は無痕灸(むこんきゅう)と呼ばれる間接灸になります。