秋の食卓に欠かせない魚と言えば、秋刀魚(さんま)でしょう。
脂の乗った身の旨さは、それだけでご飯がすすむものです。秋刀魚を焼いて、大根おろしを添え、すだちを絞って醤油をたらして食べる秋刀魚は、想像しただけで食べたくなるものです。
江戸時代、意外にも秋刀魚はあまり食べられていなかった?
秋刀魚というと、落語の『目黒のさんま』を連想する人もいるかと思います。
これは、殿様が鷹狩に目黒まで出かけたときのこと、お供が弁当を忘れてしまいお腹を空かせているとき、嗅いだことのない旨そうな匂いがしてきて、それが庶民が食べるさんまを焼く匂いであることを知ります。
焼いたさんまを口にした殿様は、その美味の虜になり大好物となった。
後日、親族の集会でさんまを所望した殿様であったが、家臣は、日本橋の魚河岸からさんまを仕入れ、さんまの脂が体に悪いと脂抜きをし、殿様の喉に骨がささるといけないと骨を取り、身姿が崩れた形でさんまが出された。
家臣のいらぬ世話で醍醐味が台無しにされたさんまが出されたわけですが、当然あまり美味しくありませんでした。
そこで殿様は、海がない目黒なのに、「さんまは目黒に限る」と断言したというオチの噺です。
こうなると、秋刀魚は庶民的な魚というイメージがつきます。
しかし、秋刀魚は、江戸時代どころか明治になっても俳句の句材としてあげられていません。
江戸時代には秋刀魚はあまり食べられていなかったのではないかと言われています。
サンマの特長
サンマ (Pacific saury) は、サンマ科サンマ属の旬が秋の魚で、全長は約40㎝です。
サンマは、漢字で書くと『秋刀魚』となりますが、背中の部分が青く、腹部は銀白色で、サンマの形が刀を連想させ、秋に大量に獲れることから『秋刀魚』の漢字が当てられました。
サンマは冷たい水を好み、夏から秋までオホーツク海を回遊し、寒波が日本列島に張り出してくるとともに南下してきて、沖縄の南ぐらいまで移動していきます。
南下していく途中で、10月から11月にかけて、三陸沖にくるころが最も脂が乗っていておいしいと言われています。
サンマの栄養成分
栄養価が高い食材には、医者などと絡めた言葉が残っているものですが、サンマも例外ではありません。
『サンマが出るとあんまが引っ込む』という言葉もあるくらいです。
良質の蛋白質に加え、豊富なビタミン類、カルシウムなどのミネラルがあります。
造血に関与するビタミンB12が豊富に含まれていて、はらわたの部分にはビタミンや鉄・カルシウム・マグネシウム・銅といったミネラルがたっぷり含まれています。
サンマは胃袋がなく腸も短い魚なので、排泄物の残留時間が少ないため、はらわたもえぐみや臭いが少なくなっています。
サンマといえば、やはり、EPAやDHAなどの魚油が豊富に含まれています。
さらに、タウリンも豊富に含まれています。
そして、旨味成分であり、代謝機能を促進する働きもあるイノシン酸を豊富に含んでいます。
サンマの選び方と注意
サンマは何と言ってもその鮮度がポイントですが、光沢があり目が充血していないものが新鮮です。
また、尾のつけ根の部分と口先が黄色になっているものは、脂が乗っていて美味しいです。
はらわたの部分にはビタミンやミネラルが豊富に含まれていて栄養価が高いのですが、冷凍されているものは内臓は食べないようにします。