西洋医学では、多くの場合対症療法なので、出ている症状に対してこの薬というような対応になっていますが、漢方の場合は、同じ風邪でも個人個人の体質、つまり証によって薬が違ってきますし、同じ人でも病気のステージによって薬が変わってきます。
『傷寒論(しょうかんろん)』では、病期を6つのステージに分けて考えています。
『傷寒論』の「傷寒」とは、インフルエンザやコロナウイルスのように感染性が強く、重篤になる感染症をいいます。
六経弁証
『六経弁証(ろっけいべんしょう)』は、漢方の陰陽の概念をもとに、病期を6つに分類したもので、臓腑経絡の病理変化になります。
この六経病証は、主に鍼灸治療に用いられます。
病理の変化としては、外邪が入ってきて、まずは「太陽経」に侵入します。
すると、腰背部などがこわばるといった症状がでてきます。
次いで「少陽経」に侵入していくと、胸脇痛が起こってきます。
さらに「陽明経」にまで侵入していくと、目や鼻が痛み、眠れなくなってきます。
さらに、病気の進行とともに、「太陰経」が邪気の影響を受けると、腹部膨満や喉の渇きが出てきます。
続いて「少陰経」にいくと、口内に渇きが起こってきます。
最後に「厥陰(けついん)経」に達すると煩悶が起こってきます。
三陰三陽弁証
漢方の鍼灸の治療の考え方で、六経弁証が使われてきましたが、漢方薬の視点では、病気の進行に応じて、病位や病勢が変化していくことに注目し、『三陰三陽弁証』の考え方ば用いられ舞うs。
風邪などの急性病の進行を陽証と陰証に分けて考えていきます。
『陽証』は、病期に対する抗病反応が強い時期で、『陰証』は、病気に対する抗病反応が弱い時期に当たります。
『陽証』には、「太陽病」、「少陽病」、「陽明病」があり、『陰証』には、「太陰病」、「少陰病」、「厥陰病」があります。
「太陽病」は、発症初期で、お棺・発熱・頭痛・頸部のこわばりなどがみられ、発汗させて熱を下げる治療法が行われます。
「少陽病」は、発病して4~5日から1週間経過した状態で、口が苦かったり、喉の渇きがあったり、食欲不振や胸脇苦満(おなかが硬く張ったような感じ)、往来寒熱(寒気と熱感が交互に現れる)といった症状があります。
「陽明病」は、発病して1週間強経て、病邪が体の裏にまで親友し、体温上昇によって全身が熱感に満ち、腹部膨満、便秘、腹痛などが起こり、高熱で喉も乾きます。
「太陰病」は、陽明病期の後に訪れ、体力低下や体の冷え、下痢、胃のあたりが重く胃腸の働きに不快感をおぼえたりする症状が出てきます。
「少陰病」は、さらに病勢が進んだ状態で、元気がなくなり、悪寒を感じるけど発熱はなく、手足が冷えているような状態で、倦怠感で眠くなったりして、脈も微細になります。
「厥陰病」は、下半身が冷え、未消化の激しい下痢が起こったり、胸が熱く、空腹だけど飲食できなくなってきます。
外邪と病期
外邪が外から入ってきて起こる病気は、まずは外から外邪が入ってくので、体の表面に入ってきます。
そこで体が外邪と戦うことで、悪寒がしたり筋肉がこわばったりします。これは病位でいえば、太陽病になります。
もし、体が負けると、外邪が半表半裏まで入ってきて、せきや熱が出ますが、これが少陽病です。
外邪はさらに体の深部まで入り込み、熱を生じた場合が陽明病です。
さらに体が負けて疲弊してくると、内臓が冷えて機能低下してしまい、三陰病になっていきます。この場合は、温補の働きがある処方で、体の内部を温めて治療していきます。