漢方に出てくる『陰陽論』は、大きな思想の一つになっています。
陰陽論の思想
中国では古代から次のような考え方・思想がありました。
「私たち人間を含む自然界において、すべての事柄には『陰』と『陽』の二面性があり、相互関係がある」
例えば、昼と夜、表と裏、明と暗、日向と日陰、夏と冬、動と静・・・といった具合に、自然界の事柄は、すべて『陰』と『陽』に互いに対立しながら依存しあい、どちらか一方だけでは存在できないという考え方です。
明と暗にしても、光があるから影ができるいう感じです。
そして、『陰』と『陽』は、そのバランスをとりながらお互いに変化していくものです。
人間の体も自然界の一部であるので、この考え方は人体にとっても当てはめることができるというのが、中国漢方の『陰陽論』の基本的な考え方です。
例えば、夏の暑い日は、人間の体は陽が強くなりすぎないように汗を出して調整しようとします。
一方寒い日は、陰が増えないように汗腺を閉じて体温を保とうとします。
このように、健康な体は、陰と陽のバランスを保っている状態ですが、そのバランスが崩れると、病気になるというのが漢方理論の考え方になっています。
漢方の『証』と陰陽

漢方では、患者の状態をしますのに『証』が用いられます。
診断を行い、『証』を判断し、それに基づいて漢方薬などを使い治療していくのが漢方医学になりますが、『証』を判断するのに、漢方では陰陽論に基づいた3つの大きなモノサシがあります。
その3つが、『虚実(きょじつ)』・『表裏(ひょうり)』・『寒熱(かんねつ)』です。
『虚実』は、生気(西洋医学で言うところの免疫力)が不足している状態が『虚証』、邪気(旺盛な病因となるもの)が体内に侵入し居座っている状態が『実証』となります。
『虚実』は、『証』を診断するときの病勢を判断するモノサシと言えます。
『表裏』は、病位(病気が起こっている場所)が皮膚や筋肉など体表に近ければ『表証』、臓器や血管など体表から深い所にあれば『裏証』と判断されます。
『表裏』は、『証』を診断するときの病気が起こっている場所を判断するモノサシと言えます。
『寒熱』は、体が熱くほてっていたり冷たいものを欲している場合は『熱証』、手足が冷たくなっていて寒気がするなどしている場合は『寒証』と判断されます。
『寒熱』は、『証』を診断するときの病気の性質や状態を判断するモノサシと言えます。
漢方の8つのタイプの『証』
漢方では、その『証』は8つのタイプに大きく分類されます。
陰陽論に基づいて、『証』を診断するときに、その判断基準として『虚実』・『表裏』・『寒熱』のモノサシがあると言いましたが、それぞれこれらの組み合わせになります。
それぞれ、虚と実、表と裏、寒と熱の2タイプあって、モノサシが3つなので、その組み合わせは2の3乗となり、8タイプに分類できるのです。
具体的には、表寒虚証、表寒実証、表熱虚証、表熱実証、裏寒虚証、裏寒実証、裏熱虚証、裏熱実証です。
漢方医学では、こうして診断された『証』に基づいて、漢方薬などの治療が行われていきます。