臨床検査値の尤度比とは | 健康トピックス

尤度(likelihood)とは、どういったものなのでしょうか?
英語をみると、だいたい想像つくと思いますが、一言でいってしまえば「らしさ」ということになります。

尤度とは

『尤度』とは・・・ということで、統計関連の書籍を調べてみると、次のように難しいことが書いてあります。

『尤度』とは、確率密度関数において確率変数に観測値を代入したものをいう。

つまり、確率密度を観測値で評価した値である。

「つまり、・・・」とかみくだいた文章を読んでも、わかりずらくなっています。

そこで、もう少しかみくだいてみると、次のように言えます。

『尤度』とは、あるデータが得られた時、それがどんな母数であった場合、そのデータがもっともらしいと言えるのだろうかという度合いということになります。

統計学的に、尤度をきちんと説明するとなると、結構難しく、わかりにくくなってしまうため、臨床検査における尤度を判断・実務という点に絞って解説していきたいと思います。

検査と尤度比

検査の場合は、参考にすべき値は、感度と特異度ということになります。

検査の場合、尤度というと、その感度と特異度から、その検査の臨床的意義を見出すためのものと言えます。

つまり、検査をすることで、その病気らしさ(尤度)を数値化できないものかと考えられたのが、『尤度比』になります。

感度・特異度から尤度比を計算する方法を示すと、次のようになります。

『陽性尤度比』=感度/(1-特異度)
『陰性尤度比』=(1-感度)/特異度

『陽性尤度比』で何がわかるのかといえば、「陽性」と判断された場合に、その診断意義が高いのか低いのかということがわかります。
『陰性尤度比』で何がわかるのかといえば、「陰性」と判断された場合に、その否定材料としての意義が高いのか低いのかということがわかります。

尤度比をどう判断するのか

『陽性尤度比』=感度/(1-特異度)
『陰性尤度比』=(1-感度)/特異度

ということから、感度・特異度がわかっていれば、『陽性尤度比』・『陰性尤度比』は計算できます。

例えば、感度70%、特異度99%の検査があったとして、これが臨床的にどういった意義があるのかを検証してみます。

『陽性尤度比』=0.7/(1-0.99)=70
『陰性尤度比』=(1-0.7)/0.99=0.30

これをどう評価するかですが、目安として次のようなことが言えます。

「陽性尤度比≧10ならば、陽性判定だった場合、その診断確率は有意に上がります。」
「陰性尤度比≦0.1ならば、陰性判定だった場合、その否定確率は有意に上がります。」

この目安基準と、計算して出てきた結果を照らし合わせてみると、『陽性尤度比』=70なので、10よりもはるかに大きいため、陽性判定された場合の診断意義は高いと言えます。

一方で、『陰性尤度比』=0.30なので、0.1よりも大きく、陰性判定された場合の否定材料としては、あまりあてにならないと言えます。
整理すると、感度70%、特異度99%の検査があった場合、陽性判定が出た場合の診断意義は高い反面、陰性判定が出た場合の否定材料としては弱いということになります。

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