海馬は、記憶を司る器官で、私達が最初にものを覚える時には、かならず情報が一度海馬を通過する必要がある、記憶にとって重要な場所です。
走ると頭が良くなるのか
動物実験ですが、走ると記憶を司る海馬が発達することがわかっています。
マウスを使った実験なのですが、水迷路のテストが行われています。
白く濁った水を水槽に入れて、周りが見えないようにします。
その水槽の一ヵ所に台を設置して、そこに行けば立って息ができるような仕掛けがされています。
マウスにこの台の位置を覚えさせて、そこに行くまでに難病で泳ぎつけるかというテストなのですが、この時、走る訓練をさせたグループと、走る訓練をさせなかったグループに分けて、それぞれの到達時間の差を調べました。
マウスたちは水槽に放り込まれた瞬間から必死で泳ぎまくります。そして立って息ができる台を見つけそこに到達します。
その結果、走る訓練をさせたマウスたちのほうが、台に到達する時間が早いという結果が出たのです。
走るとより多くの神経細胞やシナプスが作られる
これは偶然ではないのかということで、この実験の後にシナプスや神経細胞を増やすし、脳の神経細胞を分裂させ数を増やしたり、突起やシナプスを作ったりする蛋白質であるBNDFの量も調べています。
つまり、走る訓練をしたことにより、より多くの神経細胞やシナプスが生成され、そのつながりも増えることから、記憶や学習能力が高まったと考えられます。
さらに、歳をとってからでも遅くはなく、走ることで頭が良くなることが証明されています。
走る訓練をしたマウスの実験では、年をとったマウスにおいても同様に実験がされ、年をとったマウスの場合でも、脳内に変化が見られたのです。
人間でも証明されたジョギング効果
マウスの実験だけでなく、人間にも同じことが言えるのです。
被験者の最大酸素摂取量を測ってから、陳述記憶の学習テスト(AVLT)を行った結果、ジョギングをして最大酸素摂取量が大きくなった人ほど、記憶力が良くなったという結果がでています。
陳述記憶の学習テスト(AVLT)は、1秒間で読み上げられる複数の物の名前を覚えてもらい、しばらくしてからどのくらい覚えているかを調べるテストです。
ジョギングなどの有酸素運動をした結果、海馬の歯状回が大きくなり、より多くの情報をインプットすることができるようになり、短時間にたくさんの記憶ができるようになると考えられます。
まとめると、ジョギングすることにより、神経細胞を増やす蛋白質のBDNFが産生されると同時に、記憶を司る海馬の歯状回の容積が増加してきます。
こうした2つの大きな変化により、ジョギングをすると記憶力もアップすると言われています。