受験勉強なり、資格試験なり、いろいろな覚えるべきことを記憶しなければなりません。
記憶するときに、そのまま力わざで記憶していく場合もありますが、多くの人は何らかの記憶法を使ったりしています。
記憶法とは
例えば、算数の九九を覚えるときには、ニニンガシ、ニサンガロク、ニシガハチ・・・といった具合に、ひたすらお経のように何度も何度も繰り返して、自分のものにしていった人がほとんどだと思います。
算数の九九ぐらいは、日常的によく使うものですし、寝ていてもすぐに反射的にでてくるぐらいでないとダメなものです。
こうした、覚えるべきものをそのままの形で、ただひたすらに覚えるやり方も、広義の意味では記憶法と言えるかもしれませんが、狭義で考えると少し違ってきます。
これに対して、化学の原子を覚えるときに、「水平リーベ、僕の舟、七まがりシップス、クラークか・・・」とやって覚えた人が多いと思います。
これは覚えるべき対象の形を変えて、変換している記憶法を使った覚え方になり、こうしたものが狭義の意味での記憶法になります。
記憶法の歴史
記憶法ということを語るときに、よく出てくるのが、今から2500年も前の古代ギリシャ時代で、この時に記憶法なるものが生まれたとも言われています。
しかし、本格的に記憶法が発展していったのがルネッサンス時代で、文化や文明が一気に発展して、人間が学ぶべきことが加速度的に増え、情報量が増えていった時期に重なります。
このころ日本ではどうだったかというと、戦国時代以降になり、忍者たちが敵国の城などに忍び込み、巻物等に記されている情報を瞬時に覚えて、知らせているというようなことをやっていた時代です。
明治時代になると、井上円了(いのうええんりょう)という人が、記憶法をとりまとめた『記憶術講義』という本を出しました。
ちょうど文明開化の時期に重なり、多くの学問が日本に入って来た時代でもあります。
頭がいい記憶の3要素
記憶という観点から「頭がいい」というと、多くの情報を素早く正確に憶え、長い時間それを保持し、必要なときにパッと取り出せるということになります。
多くの情報を素早く正確に憶えるというのが、記銘(きめい)というフェーズで、記憶をつかさどる3つのフェーズの最初のものになります。
次に憶えたものを、憶えている状態に長い間とどめておくことが、保持というフェーズで、2番目の記憶をつかさどるフェーズになります。
そして、脳にインプットし、憶えたことを必要なときに、組み合わせたりしながら、必要な形で引っ張り出して思い出すのが、記憶をつかさどる3つのフェーズの最後、3番目にあたる再生になります。
頭がいい人というのは、記憶の達人で脳を活用して、この記憶の3つのフェーズにあたる記銘・保持・再生をうまく整合性させ、頭の中で膨大な記憶をもち、それがネットワークになって、そこからクリエイティブで新しい発想ができる人とも言えるのです。