『ブレインフォグ』は、脳の霧と言われ、頭にいつもモヤがかかっているような感じで、思考力が低下してしまいます。
感染症や薬の副作用によっても起こることがあります。
ブレインフォグの症状
感染症の後遺症や、薬による副作用によって起こるブレインフォグは、具体的にはどんな症状なのでしょうか。
『ブレインフォグ』は、頭にモヤ(霧)がかかったような状態で、集中力や思考力、決断力・記憶力などが低下して、仕事や家事にも大きな支障をきたしてしまいます。
ブレインフォグは十分な休養をとっても解消されません。
ブレインフォグの具体的な症状としては、次のようなものがあります。
※ 文章を読んでも意味が取れず、何度も読み直している。
※ 人の話しがすぐに理解できない。
※ 物事を決断するスピードや決断力が低下した。
※ やる気が出ないためつい仕事や家事へのとりかかりを先延ばししてしまう。
※ 集中しようとしても頭がボーっとしてしまい集中できない。
※ 思考力を要するようなことをすると思考の負荷がかかり疲れて横になりたくなる。
※ マルチタスクをしようとしても優先順位がつけられない。
ブレインフォグの機序
どうしてブレインフォグになるのか、その機序については明かにはされていません。
ただ、こうなのではないかということは言われていますので、ここでご紹介します。
私たち人間の脳は、主にニューロンと呼ばれる神経細胞とグリア細胞と呼ばれる神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)という2種類の細胞で更生されています。
脳というとニューロンと言うイメージを持っている人も多いかと思いますが、実は脳の90%を占めているのはグリア細胞で、10%いすぎないニューロンが情報処理を行う主役になっています。
ニューロンの隙間を埋め、脳の90%を占めるグリア細胞は、いったい何をやっているのかというと、脳の空間を差さえ、栄養を与えたり、免疫的な支援を行って、脳のニューロンネットワークが支障なく作動するようサポートしています。
このグリア細胞には、アストロサイト(星状膠細胞)、オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)、ミクログリア(小膠細胞)があります。
このうち、ミクログリアは、免疫担当細胞で中枢神経系に存在する常在性マクロファージとも呼ばれています。
感染やストレス、薬などの異物が入ってくると、肥大化したり増殖をするとともにミクログリアは活性化し、細胞膜状態などの分子の発言を変化させて、ターゲットへ向かって移動し、ダメージを受けた細胞などの細胞外蛋白質を貪食するとともに、腫瘍壊死因子(TNF-α)、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインが放出します。
これが過度になると、脳に炎症を起こし、ブレインフォグやうつ状態、多発性硬化症やアルツハイマー病などの中枢神経系疾患の悪化につながるのではないかと言われています。
ブレインフォグの治療
ブレインフォグの治療には、TMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激法)なども行われています。
TMSは、背外側前頭前野を含む前頭葉を「磁気刺激」によりケアする治療法で、これにより、グリア細胞から放出される炎症性サイトカインを抑制することで、ブレインフォグを抑えこんでいくことになります。
漢方では、ブレインフォグは気血水の血が不足している血虚(けっきょ)の状態であると考え、これを改善する処方としては、当帰芍薬散などがあります。