肌あれ、肌のかぶれ、虫さされ、肌が痒くなりかきたくなるシチュエーションは意外にも多いものです。
皮膚科を受診する患者で、もっとも多い悩みは、皮膚に生じる痒みとも言われるくらい、多くの人が悩んだことがあるのが肌の痒みです。
肌のかゆみの正体とは
肌の痒みのやっかいなことは、一度痒くなると、それを鎮めるのは簡単ではないという点です。
痒いところをかきむしってしまえば、その部分の肌バリアは破壊され、より外部の刺激を受けやすくなってしまい、さらに肌が痒くなるというスパイラルに陥ってしまうこともあります。
なぜ「痒み」が出るのかということについては、一般的にはヒスタミンなどの痒みを惹起する物質が分泌されることによって痒みが生じるということが言われていますが、痒みに対するメカニズムの解明が進んできたのがごく最近のことで、まだまだわかっていないことのほうが多いと言われています。
『痒み』の定義については、ドイツの神経生理学者のサミュエル・ハフェンレファーが「かきたい衝動を引き起こす不快な皮膚の感覚」ということで定義しました。
痒みは不快な症状ですが、異物を物理的に取り除くために必要な重要な生体防御機能だと考えられています。
健常で刺激がなくても痒くなる
痒みは、肌にある感覚受容器が刺激を受け取り、それが引き金となって生じるというイメージがありますが、それだけでなく、脳などの中枢神経系で発生した刺激が原因で起こってくる場合もあり、皮膚に刺激があって痒いと感じる場合と、脳が痒いと感じて皮膚が痒くなるものがあります。
だからこそ、健常な人で別に皮膚が何か刺激されたわけでもないのに、無性に痒くなるといったようなことが起こるのです。
かゆみの情報を伝達する神経伝達物質は、ヒスタミンが有名ですが、ヒスタミン以外にも、トリプターゼ、トリプシンなどいろいろありますが、大きくはヒスタミン受容亭であるH1またはH4、カプサイシン受容体などを介するヒスタミン系と、温度感受性受容体と結びつけて一次感覚神経が興奮することにより痒みが生じる非ヒスタミン系に分けて考えられています。
かくと痒みがおさまる理由
痒いときにかいてしまうと、肌バリアがくずれ、なおさら肌が刺激を受けやすくなり、痒みや肌荒れの原因になってしまいます。
でも、わかっちゃいるけどやめられないというスーダラ節の歌詞ではないですが、かきたい症状にかられ、実際にかいてみると痒みがおさまります。
肌をかきむしるという行為は、肌に物理的な損傷を与えていることになり、痛みを伴うものです。
かきむしることで、痛みを伝達するニューロンが働くのですが、これが痒みを伝える神経経路の興奮を抑える働きがあります、
グリシン、ダイノルフィン、GABAなどの神経伝達物質が分泌され、中枢神経に向かうかゆみ伝達ニューロンの活動が抑えられるため、かゆみが静まっていくのです。
他にお、寒冷刺激や機械刺激によってもこれと同じようなことが起こるので、かゆくて仕方ないときに、冷たいタオルをかけたり、つねったりすることでも、痒みが抑えられるのです。