人間の体表面を覆っている組織が『皮膚』ということになるのですが、それではその人間の代表面積はどのくらいあるのかというと、だいたい1.5~2平方センチメートルになります。
皮膚がなければ生きてはいけぬ
かなりの面積になりますが、No Skin, No Life (皮膚がなければ、生きていけない)と言われています。
なぜならば、皮膚がなければ、ヒトの体はたちまち水分が失われて、体を維持する生理的機能が損なわれてしまいます。
ピンとこない人は、リンゴを思い出してみると良いでしょう。
リンゴの皮を剥くと、しばらくすると干からびてくるばかりか、切り口が酸化したり、表面にカビが生えたり、腐敗が進行していってしまい、こうなるともう細胞構造が壊れてしまっています。
しかし、皮があることによって、丸ごとのリンゴは、しばらくの間みずみずしさを失いません。
これは、リンゴの皮が水分をとどめて乾燥を防いでいるとともに、細菌やウイルス感染から身をまもり、細胞内の環境を一定の状態に保つバリア機能をしているからです。
皮膚は生体防御の要
水分の乾燥を防ぐだけではなく、皮膚は外界と常時接触している臓器として、外界からの刺激に対する生体防御の要としての機能があります。
細菌・ウイルス・真菌といった病原体や有害な化学物質が無数に存在しているうえに、太陽からは有害な紫外線が容赦なく降り注いでいます。
もちろん、ケガなどの外傷といった物理的なダメージを受けることもあります。
皮膚は厚さたったの2㎜程度の薄っぺらい皮が、体と外界を明確に区切り、生体環境を守っているのです。
角層(肌)のはたらき
なかでも皮膚の一番表面にある角層は、核を持たない扁平な角層細胞からなっていて、表皮組織の10%ぐらいの厚さしかありませんが、その薄さからは想像つかないような優れたバリア機能を持っています。
細菌やウイルス、花粉やホコリ、大気汚染物質といった異物の侵入を防ぎ、外部環境と体を隔てるとともに、肌内部からの水分蒸発も最小限に抑え、乾燥を防いでいます。
皮膚の防御力は馬鹿にならず、細菌やウイルス、真菌などをブロックする際の約90%もの役割を果たしていると言われています。
皮膚には常在菌がいて、その常在菌が出す酵素によって、皮脂腺より分泌される皮脂の約4割にあたるトリグリセリドを、グリセリンと脂肪酸に分解していますが、この脂肪酸は弱酸性の性質をもち、細菌やウイルスにダメージを与えてくれます。
角層細胞は、核がなく細胞としては新でいるのですが、2週間ほど表皮にとどまり、皮膚の物理的なバリアとして大活躍をしているのです。
そしてその役割を終えると、垢となってはがれ落ちていきます。