野生でいきる動物にとっては、疲れは、攻撃面においても防御面においても、その機能が低下してしまうので死活問題です。
従って野生の動物は、本能的に疲労を避けようとしています。
人間も同じで、疲労に関しては体が警告(アラーム)を出します。
生体へのアラームとしての疲れ
人間では、生体への三大アラームがあり、それは疼痛・発熱・疲労です。
つまり疲労は、動物にとっては生死に直結する重要な問題ですので、たまったときにはそれを異常と感じるようにできていて、疲労感という防御シグナルとして出てくるのです。
慢性疲労症候群とは
疲労といえば、厚生労働省は、1991年に『慢性疲労症候群研究班』を立ち上げて、診断基準も作成しました。
『慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatige Symdrome)』の症状の特徴としては、強い疲労感・筋肉痛・頭痛・咽頭痛・睡眠障害・精神障害・脳機能障害などがあてられ、その定義としては、「生活が著しく損なわれるような強い疲労感を主な症状とし、少なくとも6ヵ月以上この状態が持続、またはこれを繰り返している」となっていて、これをもとに診断基準が作成されています。
慢性疲労症候群では、強い疲労感とともに、発熱やリンパ節腫大、脱力感などの膠原病症状、思考力低下、抑うつや不安などといった精神・神経症様症状などいろいろな症状が現れたりします。
慢性疲労症候群については、その原因や病態ははっきりとは明らかにされていません。
診断にあたっても、強い疲労感・筋肉痛・頭痛・咽頭痛・睡眠障害・精神障害・脳機能障害があるものの、慢性臓器不全・慢性感染症・慢性炎症性疾患・主な神経性疾患・代謝内分泌疾患・総合失調症・双極性障害・精神病性うつ病といった器質的疾患や病態ではないと判断された場合、慢性疲労症候群として診断されます。
慢性疲労症候群は、普通の疲労と違って、十分な休養をとっても回復しない疲労です。
米国国立衛生研究所(NIH)や医学研究所(10M)は、全身性労作不耐疾患(SEID:Systemic Exertion Intolerance Disease)として、慢性疲労症候群の診断基準で、次の3つの症状を必須条件としてあげています。
① 発症時期が明確な慢性的な疲労に伴い、病前の就労・学歴・社会的・個人的な活動レベルから大幅な低下を6ヵ月以上継続してみとめる。
② 労作後に憎悪する極度の倦怠感
③ 睡眠障害(熟睡勘、回復感を伴わない睡眠)
となっていて、以下の2つの症状のうち、いずれかの症状を認めます。
④ 認知機能の低下
⑤ 起立不耐症(起立性調整障害)
慢性疲労症候群の治療
慢性疲労症候群は、その原因や病態も明らかになっていないため、治療法が確立されえちるわけではありませんが、一般に次のようなものが治療法として行われています。
※抗酸化作用のある製剤:多量のビタミンC・CoQ10
※運動療法
※向精神薬:抗うつ薬・SSRI・抗不安薬
※免疫賦活製剤:漢方薬
※精神療法:認知行動療法