ヒトとブタのキメラの話 | 健康トピックス

キメラというと、ガメラの親戚? と思う人もいるかもしれませんが、けしてヒトとブタから怪獣が生まれたわけではありません。
キメラは、怪獣ではなくギリシャ神話に登場してくる想像上の動物です。いわば日本でいう河童ようなものです。

想像上の動物キメラは、頭はライオン、胴体はヤギ、尾はヘビ
という動物になります。

複数の動物の特徴が1つの個体に同居している架空の動物ということになります。

実際にキメラを作ろうとする動き

想像の世界の中だけで終わっていればいいのですが、なかにはこのキメラを作り出そうとしていた研究者たちもいました。
またまた、そんな変な気持ち悪い動物を作って何するの?と思うかもしれませんが、真面目な話、人間の臓器をもったキメラ動物を育てれば、それを人間に移植することができるという発想のもと、いろいろと研究されました。

こうした異種移植が実現すれば、不足する臓器に対応できるというわけです。

キメラでマウスの糖尿病が治った

東京大学では2010年に遺伝子操作によって膵臓ができなくなったマウスの胚にラットの幹細胞を注入したところ、ほぼ完全にらっとの膵臓細胞をもつマウスを誕生させています。

さらに研究が進み、2017年になるとこのキメラマウスからインスリンを生産する膵臓細胞を摘出して、これを糖尿病のマウスに移植するという実験が行われました。
すると実際にマウスの糖尿病が治ったという実験結果が得られています。

ついにブタとヒトでキメラ

アメリカのカルフォルニア州のソーク研究所というところで、ヒトとブタのキメラ杯の作製が行われ成功しています。
なんとさまざまな種類の人間の人工幹細胞を4年かにわたって1500個の豚の胚に注入し続けるという実験が行われました。

まずは豚の受精卵をゲノム編集し、膵臓の形成に必要な遺伝子を切り取って、膵臓が作れないブタにした後、ヒトのiPS細胞を注入します。
すると、ヒトのiPS細胞には膵臓を形成するのに必要な遺伝子が含まれているため、ヒト細胞でできた膵臓が、代理母となったブタの中で成長していきます。

こうして成長したキメラブタの体内の膵臓を採取してヒトに移植するのです。

実際には注入してから約20日後に人間の細胞が生存しているものは10万個のブタ細胞に1つほどという確率でしたが、ヒトとブタのキメラ誕生の第一歩と言われています。
ブタは人間の臓器と大きさや機能が似ていて、ブタそのものの臓器を移植する異種移植も検討されている中、ブタの中で生まれた膵臓が、人間の体内で機能し糖尿病の治療として活躍する日がくるかもしれません。