桃といえば、夏が旬の果物ですが、俳句の世界では、桃は秋の季語になっています。
多くの俳人が桃の俳句を読んでいる
桃は、多くの俳人に読まれていることから、昔から親しみがあった果物だということがわかります。
松尾芭蕉、夏目漱石、正岡子規も桃を題材にした句を詠んでいます。
松尾芭蕉は、次のような句を作っています。
『我が衣に 伏見の桃の 雫せよ』
伏見は京都の伏見で、桃の一大産地と言われたところです。
そのまま現代語訳すると、「私の衣を伏見の桃の雫で染め上げてください」となりますが、もう少し解釈を深めていくと興味深いものが見えてきます。
この松尾芭蕉の句は、京都の伏見に、任口上人という徳の高い有名な俳人がいたのですが、芭蕉がその任口上人という俳人と会った時に詠んだものと言われています。
この句では、任口上人を桃に、そしてその徳や教えを雫に喩えた句だと解釈されています。
もう一つ、面白い桃の句として、西東三鬼(さいとうさんき)の句を紹介したいと思います。
西東三鬼は、桃として連想する岡山県の出身で、日本歯科大学を出ているという異色の俳人として知られています。
『 中年や 遠くみのれる 夜の桃 』
西東三鬼は、1990年生まれですが、「中年」という言葉が出てくるのがいかにも現代的で面白いところです。
句をそのまま読んでみると、「私も中年と言われる年になってしまったが、夜の闇の中、遠くのほうに桃が実っている」
実は、西東三鬼は、女性を句に詠むことが多い俳人で、この句も、この桃も女性を象徴しているのではないかとも言われています。
中年になると手の届かない女性、若く美しい女性に恋焦がれているのを句にしているという解釈もでき面白いところです。
桃の栄養成分
モモはバラ科サクラ属に属し、水溶性と不溶性両方の食物繊維に富んでいるので、便を柔らかくして便通が促進し、腸の動きが活発になります。
色が白いものはフラボノイド、黄色いものはβ-カロテンをよく含みます。
また抗酸化ビタミンとも言われるビタミンEを含まれています。
美味しい桃は、縦横のバランスが良く、全体に丸みを帯びています。
果皮をみて、鮮やかな赤やピンクのものが甘く、新鮮なものは果皮の表面にうぶ毛が残っています。
冷やした桃も美味いのですが、甘味を保つなら食べる2~3時間前までは室温で保存しておくと良いでしょう。
また水で洗うと鮮度が落ちるため、食べる直前に水で洗うと良いでしょう。
桃の原産地
桃の原産地は、岡山とか言いたいところですが、実は中国の黄河流域になります。
日本には中国から弥生時代ごろに伝わったとされていて、古事記や日本書紀にも記載があります。
桃は平安時代になると水菓子と呼ばれて珍重されました。
現在、店頭で並んでいる栽培種の桃は、明治の初め頃、中国から入ってきています。