切診(せっしん)というと、体を切れれてしまうのではないだろうか、体を切って血を出してその血液を調べるのじゃないかと思ってしまうかもしれませんが、全く違います。
『切診』とは、実際に患者に触れて診察する方法です。
そういった面で言うと、『望診』、『問診』、『聞診』は、まったく患者に触ることなく診断する方法ですので、これら他の『四診』とはすこし毛色が違う診断方法と言えるのかもしれません。
切診(せっしん)とはどこに触れるのか
『切診』は、実際にどこに触れるのかというと、お腹に触れて筋肉の緊張度を診る『腹診』と、手首に触れて脈の状態を確認する『脈診』があります。
漢方医学では、これら『腹診』と『脈診』は『証を立てる』のに重要な診察と言われています。
また、たとえば『脈診』ですが、触れて診るのは『脈』ですが、このとき手首や手足の末端に触れるので、その冷え具合などもチェックされます。
脈診は3本の指で
脈診は、人差し指・中指・薬指の3本の指を手首の動脈の上に軽くのせて、触れたり強く押したりして行います。
こうすることで、脈の速さ、脈の強さ、脈の流れている部分の深さ、脈の流れ方などがチェックされます。
漢方医学では、この人差し指・中指・薬指の3本の指で触れる部分を手首に近い方から、人差し指が触れる『寸(すん)』、中指が触れる『関(かん)』、薬指が触れる『尺(しゃく)』と言います。
脈の触れやすさは、血管に指を軽く当てるだけで指を押し上げるようなはっきりとした脈であれば表証のときの特徴である『浮(ふ)』、強く圧迫したやっと触れる脈であれば裏証のときの特徴である『沈(ちん)』となります。
触ったときに、緊張して張りがり力のある脈であれば『緊脈』で、寒証ではないかと判断でき、痛みや冷え、動脈硬化などのときに出てきます。
逆に触ったときにゆったりとした脈であれば、『緩脈』であり、回復傾向にあったり、動脈硬化が軽いときなどにみられます。
いわゆる頻脈は、漢方医学の脈診では『数脈(さくみゃく)』と呼ばれ、逆に拍動数が少ない場合は『遅脈(ちみゃく)』と呼ばれます。
腹診は日本漢方医学特有の診断法
お腹を触って判断する『腹診』は、日本の漢方医学特有の診断法になります。
診察台に膝を伸ばして横になり、お腹を直接触っていき、腹部の形をよく観察してから上腹部から下腹部にかけて、お腹の温度や緊張度、力の具合などが診られていきます。
両手でお腹を押してみたり、みぞおちのあたりを軽く叩いたりして診察されます。
腹診は、内臓の異常が皮膚に現れることを利用した診察で、腹部全体を手の平で押して、押し返す力などによりその張りが強ければ実証、綿でも押しているかのように弱ければ虚証といった診断になっていきます。