漢方では、外からの病邪ではなく、体自体に由来する要因で引き起こされる病気を『内傷(ないしょう)』といい、季節・気候・環境・日内変動といった外界の要因で発症してくる病変を『外感(がいかん)』と呼んでいます。
そして、病邪により、いろいろな産物が体の中で生まれ、それらが障害性の因子、病邪として作用します。
風邪を引いたりすると、寒気がしたり、ほてったり、痰がでたりといろいろな症状がでてきますが、これらは漢方・中医学においては、正気が障害されバランスがくずれることで発生し、さらに体への障害因子として働くという考え方になっています。
痰・飲
痰・飲(いん)は、いわゆる痰のことで、粘稠なものが『痰』、希薄なものが『飲』といわれますが、その線引きはあいまいで明確でないため、「痰飲(たんいん)」・「痰湿(たんしつ)」・「水飲(すいいん)」などといわれたりします。
『痰・飲』は、水分代謝の障害にともなって生じてくるもので、これらは気や血の流れを滞らせてしまいます。
また、水分代謝の障害によって、べっとりとした舌苔になってりもしますが、こうした症状は『内湿(ないしつ)』と呼ばれています。
寒気・冷え
風邪をひくと、寒気がしたりしますが、寒気は、陽気が衰えて、体を温める能力が低下してしまったために怒ってきます。
状態としては、『内寒(ないかん)・虚寒(きょかん)』と言われ、虚弱症状とともに、寒気や冷え、舌質がタンパクではれぼったくて大きくなる、脈が弱くて遅くなるといった症状を呈してきます。
漢方ではこうした状態を、舌診や脈診によって判断して、『証』を決定していきます。
ほてり・熱感
寒気とは逆に、からだが火照ったり、のぼせたりする場合がありますが、こうした場合は『内熱(ないねつ)』の状態にあります。
『内熱』は、陽気が相対的に余っている状態で、それにより体内から熱が産み出されます。
内熱には、『実熱』と『虚熱』があります。
『実熱』は、熱が体に溜まっている状態で、発熱や発汗がみられ、時にみぞおちなどに痛みを感じることがあります。
実熱は、熱邪が活発になることにより現れてきて、高熱・口喝があり、冷たいものを飲みたがるようになり、尿は少量で濃い黄色になります。
『虚熱』は、体が虚の状態で、気・血の不足などによって起こってくる熱で、体の熱を調整できていない状態になります。
漢方・中医学では、熱ひとつとっても、その出方などによっても、いろいろな言い方があります。
『発熱』は、症状がでてくる時間に規則性がありませんが、熱がちょうど潮の干満のように一定の時間帯に出てきて周期性がある場合は、『潮熱(ちょうねつ)』、夕方の4時から5時頃に出てくる熱を『哺熱(ほねつ)』、発熱と寒気が交互にでてくる場合は『往来寒熱(おうらいかんねつ)』と言ったりします。