過労死が社会問題化してきていますが、過労死については『過労死ライン』というものがあります。
労災保険と仕事との因果関係
病気や死亡の原因が過労死によって起きたものなのかどうかの判断はなかなか難しいものです。
もし、過労死によってなくなったのであれば、労災保険の給付が受けられることになります。
労災保険とは、労働者災害補償保険法で定められていて、業務中に事故や病気などにあって、働けなくなったり脂肪してしまったりした後、収入がいきなりなくなってしまうリスクを補うためにあるもので、病気や死亡の原因が仕事のせいだと認定されればお金が受け取れるしくみです。
しかし、仕事のせいで病気や死亡となったのかの判断は、難しいものです。
なぜならば、心臓病や脳卒中などは、疲労の蓄積によっても確かに発症しますが、肥満や喫煙などの生活習慣によってもリスクがあがるからです。
たとえば、太ったヘビースモーカーの人が脳卒中になった場合、それが、忙しい日々が毎日続いたためなのか、それとも喫煙のせいなのか、肥満が原因なのか、はっきりしてこないのです。
過労死ラインとは
そこで、厚生労働省は、「脳・心臓疾患が、時間外労働(残業や休日出勤)が次のどちらかの条件を満たした場合、業務と発症との関係性が強いと評価できるとしています。これが『過労死ライン』です。
〇時間外労働(残業や休日出勤)が発症前1か月間におおむね100時間を超えている
〇時間外労働(残業や休日出勤)が発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超えている
過労死ラインと睡眠時間
過労死ラインにでてきている80時間ないし100時間というのはどういう根拠に基づいて設定されているのでしょうか。
実は、睡眠時間と病気のリスクとは深い関係があることがわかっていて、1日の睡眠時間が6時間未満では狭心症や心筋梗塞になる人が多くなり、さらに1日に睡眠時間が5時間以下になってくると、その関係はさらにはっきりすることがわかっています。
仕事で考えると、残業が長くなると睡眠時間を削らざるを得なくなってきます。
日本人の平均的な生活時間を考えると、1にち4時間程度残業すると睡眠時間が6時間に、1日5時間程度残業すると睡眠時間が5時間以下になると推測されます。
そのことから厚生労働省では検討を重ねた結果、80時間ないし100時間という過労死ラインを設定しています。
もちろん、過労死ラインというのは目安ですので、月に80時間以上の時間外労働があったからといって、必ず脳卒中や心臓病になるものではなく、80時間未満であったから脳卒中や心臓病を引き起こすというものでもありません。
当然、仕事の肉体的きつさや、精神的なストレスも関係してきます。
しかし、1日6時間以上の睡眠というのは一つの大きな目安になってきます。